第5回「チームを成功に導くリーダーシップ」

~ポジティブな影響力~

第5章「様々なリーダーシップが存在する」(テキスト:P.35~P.38)


テーマ:クラシック音楽の指揮者に学ぶ多様なリーダーシップ

【目標】

・授業内容をふまえ、自分自身の価値観に合ったリーダーシップのあり方を見出し、それについて説明できるようになる。

・様々なリーダーシップの発揮方法が存在することを理解し、それぞれの違いを説明できるようになる。

1.導入講義(動画視聴)

イタイ・タルガム(Itay Talgam)は、イスラエル出身の指揮者・教育者・コンサルタントです。特に、オーケストラ指揮者としての経験をもとに、リーダーシップや組織マネジメントの視点から独自の教育・コンサルティングを行っていることで知られています。

  • 出身:イスラエル、テルアビブ生まれ
  • 学歴
    • イスラエルのヘブライ大学で哲学学位を取得
    • パリ国立高等音楽院(Conservatoire de Paris)で音楽の学位を取得
  • 音楽キャリア
    • イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団を含む多くのオーケストラを指揮
    • クラシック音楽の分野で国際的に活躍
  • 教育・講演活動
    • TED Talk(2009年)で「偉大な指揮者に学ぶリーダーシップ(Lead like the great conductors)」を発表し、世界的に注目を浴びる

TED|イタイ・タルガム:偉大な指揮者に学ぶリーダーシップ
https://www.ted.com/talks/itay_talgam_lead_like_the_great_conductors?language=ja

2.個人ワーク

以下の問いに対して、自身の考えを記述してください。

  • あなたはどの指揮者タイプに近いと感じましたか?
  • 上司にするなら、どのタイプの指揮者が理想ですか?

3.グループワーク

各自が自分の回答を発表し、指揮者のスタイルとリーダーシップについてディスカッションしてください。


4.まとめワーク

授業全体を通じて得られた学びをふまえ、以下をまとめてください。

  • あなた自身のリーダーシップのあり方は?
  • 今後、具体的にどのようなアクションを取っていきますか?(アクションプラン)

ご参考:5人の指揮者とリーダーシップの特性

A. カルロス・クライバー(Carlos Kleiber)

  • 楽団員に自由を与え、自発的な表現を引き出すスタイル。
  • 身振りが柔らかく、明確に意思を示しつつも強制しない。
  • 音楽を“共に創る”喜びを重視し、信頼を基盤とした関係を築く。
  • 組織の「余白」に力を与えることで、創造性が生まれる。
  • “静かなる統率”により、調和と美を引き出すリーダー像。

B. リッカルド・ムーティー(Riccardo Muti)

  • 明確な命令と強い統率力でオーケストラを制御するスタイル。
  • 自身の解釈を最優先し、楽団員に従順さを求める。
  • 指揮に力強さがあり、権威による統率を感じさせる。
  • 結果は正確だが、メンバーの主体性や創造性を抑える傾向。
  • 権威型リーダーシップの典型とされる。

C. リヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss)

  • 作曲家としての立場から楽譜第一主義(マニュアル重視)を貫き、楽譜に忠実な演奏を求める。
  • 指揮をほとんどせず、最小限の合図のみで楽団を導く。
  • 楽団員への絶大な信頼を前提とし、任せることで力を引き出す。
  • 自律性と責任を尊重する「放任型リーダー」に近いスタイル。
  • 無言の信頼関係による組織運営の可能性を象徴する存在。

D. ヘルベルト・フォン・カラヤン(Herbert von Karajan)

  • 指示は抽象的で視覚的にも曖昧だが、楽団員はその意図を読み取り演奏する。
  • 直感的な導きとカリスマ性により、無言の影響力を発揮する。
  • 「見えないリーダーシップ」の極致と評される存在。
  • 統率というより“雰囲気”や“期待”によって方向づけるスタイル。
  • メンバーが自ら気づき、全員で合わせ、価値を創造しようとする空気を生み出す。

E. レナード・バーンスタイン(Leonard Bernstein)

  • 表現豊かな指揮で、音楽への情熱を全身で伝える。
  • メンバーと共鳴しながらリードする協調型リーダー。
  • 喜びや感動を共有し、感性に訴える影響力を持つ。
  • ストーリーを表現し、メンバーにインスピレーションを与える。
  • 信頼と共感を通じた「感性型のリーダーシップ」を体現する。

 リーダーシップは「型」ではなく「関係性」です。
 相手と共に何を創るのか、その姿勢こそがあなたのスタイルになります。

 偉大な指揮者たちは、皆ちがう方法でオーケストラを導いています。しかし共通しているのは、「音楽という目的」に向かって、一人ひとりの力を引き出し、全体を調和させているということです。

リーダーシップに「正解」はありません。あなた自身がどのように関わり、信頼を築き、チームや組織の力をどう引き出すかが問われています。

あなたにしか奏でられないリーダーシップが、必ずあります。

次にリーダーとして何かを任されたとき、ぜひ、今日の5人の指揮者たちを思い出してください。そして、あなたらしい“指揮棒”を掲げてみてください。

まとめ

1.音楽とリーダーシップの共通点

  • 指揮者は「指示を出す人」ではなく、音楽を共に創るために人々を導く存在
  • 指揮者のリーダーシップは、メンバーとの「対話」や「関係性」によって成立している。

2.5人の指揮者(要約)

カルロス・クライバー(Carlos Kleiber)
楽団員の自由と創造性を尊重し、自律性を引き出す、ただし誤った演奏をした場合は、明確な指示を与えるスタイル。

リッカルド・ムーティー(Riccardo Muti):明確な命令と権威で統率する、支配的なスタイル。

リヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss):自分は指示をほとんど出さず、楽譜の忠実な解釈を大切にし、楽団員の自律性に信頼を置くスタイル。

ヘルベルト・フォン・カラヤン(Herbert von Karajan)
抽象的かつ直感的な指示で、メンバー自身に解釈させ、全体に調和と期待感を醸成するスタイル。

レナード・バーンスタイン(Leonard Bernstein)
感情豊かで情熱的、喜びを共有しながら導き、ストーリーを語ることでメンバーの心に響かせ、持ち味を引き出すスタイル。

3.「沈黙の力」と「問いかけるリーダーシップ」

  • 指揮者は言葉ではなく、身振り・目線・空気感でメッセージを伝える
  • メンバーが自ら考え、気づき、動けるように「余白」をつくることが重要。

4.自分の「指揮棒」を持つ

  • 誰もが「指揮者」としてのリーダーシップを持つことができる。
  • リーダーには、明確な答えを示し導く人もいれば、問いを投げかけ、共に探す人もいる。
  • どのスタイルであれ、自分自身のリーダーシップスタイルを見つけることが大切です。

以上

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