WIDEBOOK


3.マーケティング・市場調査・分析

Marketing Research and Analysis

― AIをリサーチャー、アシスタントとして活用し、新規ビジネスの可能性を探る ―

Stage 1では、自分たちの体験や気づきから、新しいビジネスのアイデアを発想し、リッチ・ピクチャーとして描きました。

Stage 2では、そのアイデアをビジネスイメージ図として整理し、顧客に提供したい価値や、ビジネスの基本的な仕組みを具体化しました。

ここまで進めてきて、皆さんはどう感じているでしょうか。

「これは、なかなか面白いビジネスになりそうだ」

「こんなサービスがあったら、きっと喜んでもらえる」

そんな期待が生まれてきたかもしれません。

しかし、ここで一つ、考えてみてください。

皆さんが考えたアイデアと同じようなことを、世界のどこかで、すでに誰かが考えているかもしれません。

そして、そのアイデアを、すでにビジネスとして実現している企業や人々がいるかもしれません。

自分たちのアイデアと似たビジネスが、すでに存在していたらどうでしょうか。

「もう誰かがやっているのか」

そう気づいた時、がっかりする必要はありません。

むしろ、そこからが新規ビジネス企画の重要な出発点になります。

先行するビジネスから学ぶ

自分たちと似たビジネスが存在しているとしましょう。

その企業は、どのような顧客を対象としているのでしょうか。

どのような商品やサービスを提供しているのでしょうか。

どのような仕組みで収益を得ているのでしょうか。

また、顧客からどのような評価を受けているのでしょうか。

こうしたことを詳しく調べることで、自分たちだけでは気づかなかったビジネスの仕組みや、事業を成立させるための条件が見えてきます。

そして、先行するビジネスにも、まだ十分に解決できていない課題や、顧客の要望に応えきれていない部分があるかもしれません。

「このサービスは便利だけれど、ここが使いにくい」

「商品は魅力的だけれど、価格が高すぎる」

「このサービスを利用したい人は、ほかにもいるのではないだろうか」

「新しい技術を活用すれば、もっと便利な仕組みにできるのではないだろうか」

このように考えていくことで、自分たちのビジネスをさらに発展させる可能性が見えてきます。

先行するビジネスの優れた点を学び、弱点や不足している部分を見つけ、自分たちならではの価値を加えることで、ビジネスモデルを強化していく。

これが、今回の市場調査・分析で大切にしたい考え方です。

もちろん、似たビジネスが見つからない場合もあるでしょう。

その場合にも、なぜこれまで実現されていないのか、技術や市場、収益性などの面でどのような条件が必要なのかを調べることが重要です。

市場調査・分析には、これまで多くの時間と労力が必要でした。

市場に関する統計資料を探す。

競合企業のWebサイトや公表資料を調べる。

顧客のニーズを整理する。

社会や技術の変化について情報を集める。

そして、集めた情報を比較・分析し、図表としてまとめる。

こうした作業を一つずつ進めるには、相当な時間が必要でした。

しかし、近年の生成AIの登場によって、調査・分析の進め方は大きく変わりました。

AIは、調査項目の整理、情報収集の支援、競合企業の比較、分析結果の構造化、図表の作成支援など、さまざまな場面で活用できます。

従来、多くの時間を必要としていた調査・分析の作業を、AIの活用によって飛躍的に高速化できるようになったのです。

ただし、AIを使えば、何も考えずに簡単に市場調査ができるという意味ではありません。

AIは、古い情報や根拠が不十分な情報を提示する場合があります。また、実在しない資料や誤った数値を回答する可能性もあります。

そのため、AIから得られた情報については、出典や調査時期を確認し、内容を十分に吟味する必要があります。

今回の講座におけるAIの役割

今回の講座では、AIの活用を前提として市場調査・分析を進めます。

学生の皆さんが、最初からすべての分析手法を理解し、自分たちだけで調査を進める必要はありません。

まず、AIに調査や分析を依頼してみましょう。

そして、その結果を見ながら考えてください。

「この分析から、何が分かったのだろうか」

「なぜ、AIはそのように判断したのだろうか」

「自分たちのビジネスにとって、何が重要なのだろうか」

「この結果を踏まえて、ビジネスモデルをどう改善すればよいのだろうか」

分からないことがあれば、AIに何度でも質問してください。

「もっと分かりやすく説明してください」

「具体例を示してください」

「その判断の根拠は何ですか」

「反対の立場から考えると、どのような問題がありますか」

こうした対話を通じて、調査・分析の内容を理解していきましょう。

AIに調査・分析を支援してもらい、その結果を理解し、吟味し、自分たちのビジネスモデルを進化させる。

これが、今回のStage 3の学習方法です。

今回の講座では、次の七つのStepに沿って市場調査・分析を進めます。

Step 1

4C分析

顧客・競合・自社・協力者を調べ、ビジネスを取り巻く基本的な関係を理解する。

Step 2

外部環境分析

PEST分析を活用し、政治・政策、経済、社会、技術などの変化を調べる。

Step 3

競争分析(5 Forces分析)

業界の競争構造を分析し、自分たちのビジネスが直面する競争上の課題を明確にする。

Step 4

問題点分析・原因と影響分析

ビジネスの魅力と問題点を整理し、重要な課題の原因と影響を明確にする。

Step 5

リスク分析

事業の実現や継続を妨げるリスクを明確にし、必要な対策を考える。

Step 6

トレンド分析

社会、市場、技術などの変化を時間軸で捉え、今後のビジネスの可能性を考える。

Step 7

SWOT分析

これまでの分析結果を統合し、自分たちのビジネスの強み・弱み・機会・脅威を明確にする。

図7-1 分析による論点整理の全体フローとSWOTへの統合

ここで重要なのは、最初からSWOT分析を行わないことです。

4C分析、外部環境分析、競争分析、問題点分析、リスク分析、トレンド分析を行い、それぞれの結果を理解したうえで、最後にSWOT分析へ統合します。

SWOT分析は、思いつきで四つの枠を埋めるものではありません。

これまでの調査・分析によって得られた情報を整理し、自分たちのビジネスにとって重要な強み、弱み、機会、脅威を明確にするものです。

そして、その結果を基に、どのような戦略が必要なのかを考えていきます。

なお、本講座では、各分析で作成した図表を最終的な共同論文に収録します。

そのため、分析結果は、後から確認できるように保存しておきましょう。

4C分析(4C Analysis)とは、ビジネスを取り巻く基本的な構造を、四つの視点から整理する方法です。

Customer

顧客

誰が、どのような価値を求めているのか。

Competitor

競合

どのような競合や代替サービスが存在しているのか。

Company

自社

自分たちのビジネスには、どのような強みや弱みがあるのか。

Collaborator

協力者

ビジネスを実現するために、誰の協力が必要なのか。

図7-2 4C分析の適用:提案モデル「地域の匠」の論点整理

① Customer:顧客分析

最初に考えるのは、顧客です。

自分たちの商品やサービスを、誰が利用するのでしょうか。

その人は、どのような課題や要望を持っているのでしょうか。

現在、その課題をどのような方法で解決しているのでしょうか。

そして、自分たちの商品やサービスに、どのような価値を期待するのでしょうか。

ここでは、単に「若者」「高齢者」「旅行者」といった大まかな分類だけでなく、顧客の具体的な生活や利用場面を考えることが重要です。

例えば、大崎の事例では、地域の暮らしや文化を体験したい都市部の住民や旅行者を顧客として想定しています。

しかし、同じ旅行者でも、家族で自然を楽しみたい人と、地域の技能を学びたい人では、求めている価値が異なります。

自分たちは、誰の、どのような要望に応えようとしているのか。

このことを明確にしましょう。

② Competitor:競合分析

次に、自分たちと似た商品やサービスを提供している企業を調べます。

すでに、世界のどこかで、自分たちと同じようなビジネスが実現されているかもしれません。

まず、そのような企業やサービスを見つけてください。

そして、提供内容、料金、対象顧客、販売方法、収益の仕組みなどを調べます。

さらに、次のようなことを考えてみましょう。

「なぜ、その企業は顧客から選ばれているのだろうか」

「その企業の強みは何だろうか」

「顧客が不満に感じていることはないだろうか」

「まだ十分に対応できていない顧客層はないだろうか」

先行するビジネスの優れた点を学び、弱点や不足している部分を発見することが、自分たちのビジネスモデルを強化するための重要な材料になります。

なお、競合の弱点は、単に自分たちがそう思ったというだけでは十分ではありません。

顧客の声や公開資料などを確認し、事実に基づいて考えましょう。

③ Company:自社分析

ここでは、皆さんが企画する新規ビジネスを、一つの企業として考えます。

実際に会社を設立していなくても構いません。

自分たちが考えている事業には、どのような強みがあるのでしょうか。

競合と比較して、どのような特徴があるのでしょうか。

また、事業を実現するために、どのような技術や知識、人材、設備、資金などが必要なのでしょうか。

自分たちには、まだ不足しているものもあると思います。

それらを明確にしておくことが、後のビジネスモデルの設計につながります。

④ Collaborator:協力者分析

新規ビジネスは、必ずしも自分たちだけで実現できるわけではありません。

商品やサービスを提供するために、どのような企業や人々の協力が必要なのかを考えます。

例えば、大崎の事例では、地域の農家や漁師、自治体、地域団体などとの協力関係が重要になります。

協力者については、誰の協力が必要かということだけでなく、相手にとってどのようなメリットがあるのかも考えましょう。

自分たちにとって都合のよい仕組みであっても、協力者に過度な負担がかかるビジネスでは、継続が難しくなる可能性があります。

AIに4C分析を依頼してみよう

AIにこう聞いてください①

私たちは大学生4〜5名のチームで、新規ビジネスを企画しています。 私たちのビジネスアイデアは次のとおりです。 【ビジネスアイデアを入力・ビジネスイメージ図を添付】 このビジネスについて、4C分析を行ってください。 Customer(顧客) Competitor(競合) Company(自社) Collaborator(協力者) それぞれについて、現状、主な特徴、強み、弱み、事業を成立させるための条件を整理してください。 特に、私たちと似たビジネスを、国内だけでなく海外も含めて調べ、先行する企業やサービスの具体例を示してください。 そのうえで、先行するビジネスの優れた点と、顧客の要望に十分対応できていない可能性がある点を整理してください。 私たちのビジネスを強化するために、どのようなことが考えられるかについても教えてください。 調査できた事実と仮説を区別し、確認可能な情報の出典も示してください。 最後に、4C分析の結果を一枚の図と比較表にまとめるための構成案を作成してください。

AIの分析結果をどう考えるか

AIから回答が返ってきたら、まず競合企業や類似サービスを確認してみましょう。

特に、先行するビジネスの仕組みについて、どのようなことが分かったでしょうか。

自分たちのアイデアと、何が同じで、何が違うのでしょうか。

そして、最も重要なのは、次の問いです。

「先行するビジネスから何を学び、どのような新しい価値を加えれば、自分たちのビジネスモデルを強化できるだろうか」

この問いについて、チームで話し合ってください。

AIが提案した差別化の方向性も参考にして構いません。

ただし、最終的には、自分たちがどのようなビジネスを実現したいのかを考えて判断しましょう。

今回の成果物

4C分析図と、主要な競合商品・サービスの比較表を作成してください。

顧客・競合・自社・協力者について、調査結果と自分たちの考察を整理し、最終的な共同論文に収録します。

4C分析では、顧客、競合、自社、協力者という、ビジネスを取り巻く基本的な関係について考えました。

しかし、ビジネスは、それらの関係だけで成立しているわけではありません。

社会や経済、法律、技術など、さまざまな外部環境から影響を受けています。

例えば、技術革新によって、これまで実現できなかった新しいサービスが可能になるかもしれません。

反対に、法律や制度の変更によって、これまで提供できていたサービスが制限されることもあります。

そこで、次に外部環境分析を行います。

PEST分析とは何か

PEST分析とは、ビジネスを取り巻く外部環境を、政治・政策、経済、社会、技術という四つの視点から整理する方法です。

P:Political

政治・政策・法律

政府や自治体の政策、法律、規制、補助金、行政の方針などが、ビジネスに与える影響を考えます。

E:Economic

経済

景気、物価、所得、雇用、金利、消費動向などが、顧客の購買行動や事業の収益性に与える影響を考えます。

S:Social

社会

人口構造、少子高齢化、生活様式、働き方、人々の価値観や消費行動などの変化を考えます。

T:Technological

技術

AI、IoT、ロボット、通信技術、デジタルサービスなどの技術革新が、ビジネスに与える影響を考えます。

今回の講座では、PESTの四つの視点に加えて、対象とする業界・市場そのものの変化も調べます。

図7-20 外部環境分析の全体像(5要素の整理)

この図では、対象業界・市場を中心として、政策変化、技術変化、マクロ経済の変化、社会的変化との関係を示しています。

例えば、大崎の事例では、地域活性化に関する政策、都市部住民の地域体験への関心、スマートフォンやWebサービスの普及などが、ビジネスの可能性を考えるうえで重要な外部環境となります。

皆さんのビジネスについても、同じように考えてみましょう。

AIに外部環境分析を依頼してみよう

AIにこう聞いてください②

私たちが企画している新規ビジネスについて、PEST分析を行ってください。 【ビジネスアイデアと4C分析の結果を入力】 政治・政策・法律(Political) 経済(Economic) 社会(Social) 技術(Technological) この四つの視点から、現在の外部環境を調査してください。 さらに、私たちが参入しようとしている業界・市場の動向についても調べてください。 それぞれについて、 ・現在の状況 ・最近の主な変化 ・私たちのビジネスに与える影響 ・今後の事業機会と制約 を整理してください。 公的統計や政府機関、業界団体などの資料を優先し、確認可能な出典、調査時期、URLを示してください。 事実と将来予測、仮説を区別してください。 最後に、私たちのビジネスに特に関係が深い外部環境の要因を整理し、一枚の図にまとめるための構成案を作成してください。

AIの分析結果をどう考えるか

AIが提示した外部環境の情報を、すべて取り上げる必要はありません。

まず、自分たちのビジネスに大きな影響を与えるものを探してみましょう。

例えば、AIの普及によって、新たなサービスを実現できる可能性があるかもしれません。

一方、顧客の所得や物価の変化によって、商品やサービスの価格設定を見直す必要があるかもしれません。

ここで考えてほしいのは、次の問いです。

「社会や経済、技術の変化によって、自分たちのビジネスには、どのような新しい機会や制約が生まれるのだろうか」

AIの回答を参考にしながら、チームで考えてみてください。

そして、その影響を受けるのは誰なのか、顧客の行動や事業の仕組みがどう変化するのかまで考えてみましょう。

今回の成果物

PEST分析図と、対象業界・市場の外部環境分析図を作成してください。

主要な外部環境の変化が、自分たちのビジネスにどのような影響を与えるのかについても整理し、最終的な共同論文に収録します。

次に、競争分析を行います。

4C分析では、主な競合企業や類似サービスについて調べました。

しかし、競争について考える時には、現在の競合企業だけを調べれば十分というわけではありません。

これから同じ市場に参入してくる企業があるかもしれません。

全く異なる商品やサービスが、自分たちのビジネスの代わりになることもあります。

また、顧客や供給者との関係によって、価格や利益が大きく左右されることもあります。

そこで、業界全体の競争構造を、五つの視点から整理します。

ファイブ・フォース分析とは何か

ファイブ・フォース分析(Five Forces Analysis)は、マイケル・ポーターが提唱した、業界の競争構造を捉えるための分析方法です。

① 既存企業間の競争

すでに同じ業界で事業を行っている企業との競争です。

競合企業の数や規模、価格競争の状況、商品やサービスの違いなどを調べます。

② 新規参入の脅威

これから同じ市場に参入してくる企業によって、競争が激しくなる可能性です。

参入するために必要な技術、資金、設備、許認可なども確認します。

③ 代替品・代替サービスの脅威

顧客が、別の商品やサービスによって、同じ目的を達成できる可能性です。

自分たちとは異なる業界の商品やサービスが、代替手段になる場合もあります。

④ 買い手の交渉力

顧客が価格やサービス内容などについて、どの程度の交渉力を持っているかを考えます。

顧客が簡単に他の商品やサービスへ乗り換えられる場合、価格や品質などの面で競争が激しくなる可能性があります。

⑤ 売り手の交渉力

原材料、技術、人材、設備などを提供する供給者が、どの程度の交渉力を持っているかを考えます。

特定の企業や供給者に依存している場合、価格や供給条件の面で影響を受ける可能性があります。

図7-33 ポーターのファイブ・フォース分析:提案モデル「地域の匠」の競争構造

AIに競争分析を依頼してみよう

AIにこう聞いてください③

私たちが企画している新規ビジネスについて、ポーターのファイブ・フォース分析を行ってください。 【ビジネスアイデア、4C分析、外部環境分析の結果を入力】 次の五つの視点から、競争構造を分析してください。 1.既存企業間の競争 2.新規参入の脅威 3.代替品・代替サービスの脅威 4.買い手の交渉力 5.売り手の交渉力 それぞれについて、具体的な競争要因、現状、私たちのビジネスに与える影響を整理してください。 可能な限り、実際の競合企業や商品・サービスの事例も示してください。 そのうえで、私たちがビジネスモデルを強化するために、どのような工夫が考えられるかを提案してください。 調査結果と仮説を区別し、確認可能な根拠も示してください。 最後に、五つの競争要因を一枚のファイブ・フォース分析図としてまとめるための構成案を作成してください。

AIの分析結果をどう考えるか

競争分析で考えてほしいのは、単に競争が激しいかどうかということではありません。

先行するビジネスは、どのような仕組みによって競争しているのでしょうか。

自分たちが同じ市場に参入した場合、どのような課題があるのでしょうか。

そして、どのような価値を加えれば、顧客から選ばれるビジネスになるのでしょうか。

例えば、大崎の事例では、既存の旅行会社や宿泊予約サービスなどが競合・代替サービスとして考えられます。

そこで、地域の人々との交流や学び、継続的な関係づくりなどを組み合わせることで、どのような新しい価値を生み出せるのかを検討しています。

皆さんも、**「既存の競合と同じことをするのではなく、どのような新しい価値を加えればよいのだろうか」**という問いについて考えてみてください。

今回の成果物

ファイブ・フォース分析図を作成し、各競争要因が自分たちのビジネスに与える影響を整理してください。

分析から発見した競争上の課題や差別化の方向性も記述し、最終的な共同論文に収録します。

ここまでの分析によって、自分たちのビジネスの魅力や可能性が、少しずつ明確になってきたと思います。

その一方で、ビジネスを実現するうえでの問題点も見えてきたのではないでしょうか。

例えば、次のような問題が考えられます。

「顧客が十分に集まらないかもしれない」

「競合と比較して、価格が高くなるかもしれない」

「必要な技術や人材を確保できないかもしれない」

「サービスを提供するために、大きな費用がかかるかもしれない」

こうした問題点を整理し、その原因と影響を明確にするのが問題点分析です。

① 魅力と問題点を整理する

まず、4C分析や外部環境分析、競争分析で明らかになったことを振り返ってみましょう。

そして、自分たちのビジネスの魅力と問題点を整理します。

ここでは、チームのメンバーがそれぞれ気づいたことを、付箋などに書き出す方法も有効です。

最初からAIにすべての問題点を決めてもらう必要はありません。

まず、自分たちが感じていることを自由に出してみましょう。

その後、AIを活用して、見落としている問題点や別の視点がないかを確認します。

図7-35 魅力/課題の構造化:進め方

② 重要な問題点を選ぶ

すべての問題を一度に解決することは難しいかもしれません。

そこで、ビジネスの成立に大きな影響を与える問題点を選びます。

チームのメンバーがそれぞれ重要だと思う問題点を挙げ、その理由を説明し合いましょう。

大切なのは、単に多数決で決めることではありません。

それぞれの意見を聞き、問題の重要性について理解を深めながら、チームとして合意することです。

③ 原因と影響を分析する

次に、選んだ問題点について、なぜその問題が起きるのかを考えます。

例えば、ある地域体験サービスについて、「交通の便が悪い」という問題があったとします。

その原因は、公共交通機関の本数が少ないことかもしれません。

利用者が少ないため、交通事業者が運行本数を増やせないのかもしれません。

そして、その結果として、顧客の移動時間や費用が増え、サービスを利用しにくくなっている可能性があります。

このように、問題の原因と影響を整理することで、何を改善すればよいのかが見えてきます。

図7-38 課題の因果連鎖図(原因―問題―影響)

AIに原因と影響の分析を依頼してみよう

AIにこう聞いてください④

私たちの新規ビジネスについて、これまでの市場調査・分析から、次の問題点を発見しました。 【チームで選んだ重要な問題点を入力】 これらの問題点について、原因と影響を分析してください。 それぞれについて、 1.問題点の内容 2.問題が発生する主な原因 3.その原因が生まれる背景 4.問題を放置した場合の影響 5.考えられる改善策 を整理してください。 問題の原因については、「なぜ、そのようなことが起きるのか」という問いを繰り返し、できるだけ根本的な原因まで考えてください。 ただし、原因と影響の関係が確認できていない場合は、仮説として区別してください。 最後に、原因・問題点・影響のつながりを一枚の図として整理するための構成案を作成してください。

AIの分析結果をどう考えるか

AIが示した原因について、チームで考えてみましょう。

本当に、その原因によって問題が発生しているのでしょうか。

別の原因も考えられるのではないでしょうか。

また、問題を解決するためには、どの部分を改善すればよいのでしょうか。

ここで重要なのは、「問題があるから仕方がない」と考えるのではなく、「その問題を解決することで、どのような新しいビジネスの可能性が生まれるのか」を考えることです。

例えば、交通の便が悪いという問題に対して、新しい移動サービスを組み合わせることで、これまで利用できなかった顧客が参加できるようになるかもしれません。

問題点は、新しい価値を生み出すきっかけにもなります。

今回の成果物

主な問題点と、重要な問題についての原因・影響分析図を作成してください。

問題の解決によって、どのような新しい価値を生み出せるのかについても整理し、最終的な共同論文に収録します。

次に、リスク分析を行います。

ここまでの分析では、自分たちのビジネスの魅力や課題を考えてきました。

しかし、どれほど魅力的なビジネスであっても、実際に事業を始めれば、さまざまな問題が発生する可能性があります。

例えば、顧客が想定したほど集まらないかもしれません。

必要な商品や原材料を確保できなくなるかもしれません。

事故やシステム障害が発生することも考えられます。

こうしたリスクを事前に考え、必要な対策を検討しておくことが重要です。

① どのようなリスクがあるのか

まず、自分たちのビジネスについて、考えられるリスクを洗い出します。

顧客、商品・サービス、技術、人材、資金、安全性、情報管理などの視点から考えてみましょう。

また、サービスを提供する前、提供している時、提供した後という業務の流れに沿って考えることも有効です。

図7-46 サービス工程×ステークホルダーによるリスク洗い出し(事前〜事後)

② リスクの発生可能性と影響を考える

洗い出したリスクについて、発生する可能性と、発生した場合の影響を考えます。

発生する可能性が高く、影響も大きいリスクについては、特に注意が必要です。

また、発生する可能性が低くても、人命や事業の継続に重大な影響を与えるリスクについては、十分な対策が必要になります。

【ここに原著の図7-45を挿入】

図7-45 リスク評価マトリクスと対応方針(回避・低減・移転・受容)

③ リスクへの対応策を考える

リスクへの対応には、回避、低減、移転、受容という四つの基本的な考え方があります。

回避とは、リスクを伴う活動を行わない、または実施方法を変更することです。

低減とは、リスクが発生する可能性や、発生した場合の影響を小さくすることです。

移転とは、保険や契約などを通じて、リスクに伴う損失の一部を他者へ移すことです。

受容とは、リスクの内容を理解し、必要な備えをしたうえで、残るリスクを受け入れることです。

図7-48 リスク対策の4つのアプローチ:回避・低減・移転・受容

AIにリスク分析を依頼してみよう

AIにこう聞いてください⑤

私たちの新規ビジネスについて、リスク分析を行ってください。 【ビジネスアイデアとこれまでの分析結果を入力】 事業を実現し、継続して運営するうえで考えられる主なリスクを洗い出してください。 顧客、商品・サービス、技術、人材、資金、安全性、情報管理などの視点から整理してください。 さらに、商品やサービスの提供前、提供中、提供後という業務の流れからも検討してください。 それぞれのリスクについて、 1.リスクの内容 2.発生する主な原因 3.発生する可能性 4.発生した場合の影響 5.考えられる対応策 を整理してください。 回避・低減・移転・受容という四つの考え方も参考にしてください。 発生可能性や影響の評価に十分な根拠がない場合は、仮の評価であることを明示してください。 最後に、リスク評価マトリクスと、主要リスクへの対応策を整理した図表の構成案を作成してください。

AIの分析結果をどう考えるか

AIが提示したリスクについて、チームで確認してみましょう。

そのリスクが発生した場合、誰に、どのような影響があるのでしょうか。

事業を継続できなくなる可能性はないでしょうか。

また、リスクを小さくするために、ビジネスモデルそのものを変更する必要はないでしょうか。

リスク分析は、危険なことを並べるだけではありません。リスクを理解し、必要な対策を考えることで、より安心して利用できる、持続可能なビジネスモデルへと発展させるための分析です。

今回の成果物

リスク一覧表、リスク評価マトリクス、主要なリスクへの対応策を作成してください。

これらの図表を、最終的な共同論文に収録します。

ここまで、顧客、競合、外部環境、問題点、リスクなどについて調査・分析してきました。

次に考えたいのは、これから社会や市場がどのように変化していくのかということです。

新規ビジネスを企画する時には、現在の状況だけを考えていては十分ではありません。

今後、社会や技術が変化することによって、新しい商品やサービスへの需要が生まれる可能性があります。

また、現在は魅力的なビジネスであっても、社会や市場の変化によって、将来は利用されなくなるかもしれません。

そこで、トレンド分析を行います。

トレンド分析とは何か

トレンド分析とは、社会、市場、技術、人々の生活などが、過去から現在までどのように変化し、今後どのような方向へ進む可能性があるのかを考える方法です。

本講座では、次の三つの視点から考えます。

① 対象業界の変化

自分たちが参入しようとしている業界では、商品やサービス、顧客ニーズ、競争の仕組みなどが、どのように変わってきたのでしょうか。

② 関連する技術や事業環境の変化

AI、通信技術、情報システム、決済、物流などの変化によって、新しいビジネスの仕組みが生まれていないでしょうか。

③ 社会や生活者の変化

人々の価値観、生活様式、働き方、消費行動などは、どのように変わっているのでしょうか。

図7-40 対象業界を取り巻くトレンド俯瞰(1980年代〜2026年時点の見通し)

この図は、「地域の匠」が関係する業界の変化を、過去からの時間軸で整理した事例です。

皆さんも、自分たちのビジネスについて、同じように時間軸で考えてみましょう。

AIにトレンド分析を依頼してみよう

AIにこう聞いてください⑥

私たちが企画している新規ビジネスについて、トレンド分析を行ってください。 【ビジネスアイデアと対象業界を入力】 次の三つの視点から、過去から現在までの変化と、今後の方向性を分析してください。 1.対象業界の変化 2.関連する技術や事業環境の変化 3.社会や生活者の価値観・行動の変化 それぞれについて、主な変化を時間軸に沿って整理してください。 また、その変化が私たちのビジネスに、どのような新しい機会や脅威をもたらす可能性があるかを説明してください。 現在確認できる事実と、将来についての予測・仮説を区別してください。 可能な限り、根拠となる統計資料や業界資料の出典も示してください。 最後に、横軸を時間軸としたトレンド分析図の構成案を作成してください。

AIの分析結果をどう考えるか

トレンド分析では、将来の出来事を正確に予測することが目的ではありません。

過去から現在までの変化を理解し、今後どのような可能性があるのかを考えることが重要です。

例えば、AIの普及によって、自分たちのビジネスにどのような新しいサービスを加えられるのでしょうか。

顧客の価値観が変化することによって、これまでとは異なる商品やサービスが求められるかもしれません。

そこで、次の問いについて考えてみてください。

「これからの社会や市場の変化を考えた時、自分たちのビジネスモデルには、どのような新しい可能性があるのだろうか」

現在のビジネスモデルを、そのまま将来に当てはめる必要はありません。

トレンド分析から得られた気づきを基に、自分たちのアイデアをさらに発展させていきましょう。

時間軸に沿ったトレンド分析図を作成してください。

主な社会・市場・技術の変化と、自分たちのビジネスへの影響を整理し、最終的な共同論文に収録します。

ここまで、4C分析、外部環境分析、競争分析、問題点分析、リスク分析、トレンド分析を行ってきました。

自分たちのビジネスについて、多くのことが分かってきたと思います。

先行するビジネスの優れた点や、まだ十分に対応できていない顧客の要望。

自分たちのビジネスの強みと弱み。

社会や技術の変化によって生まれる、新しいビジネスの機会。

そして、競争や外部環境の変化によって生まれる脅威。

これらの分析結果を統合し、自分たちのビジネスの戦略を考えるための材料として整理するのがSWOT分析です。

SWOT分析は、最初に思いつきで作成するものではありません。ここまでの調査・分析によって得られた情報を整理し、統合するものです。

SWOT分析の四つの視点

Strengths

強み

自分たちのビジネスが持つ資源・能力・特徴など、事業にとってプラスとなる内部要因。

Weaknesses

弱み

自分たちのビジネスに不足している資源・能力や、改善が必要な内部要因。

Opportunities

機会

社会や市場、技術などの変化によって生まれる、事業にとってプラスとなる外部要因。

Threats

脅威

競争や社会の変化など、事業にとってマイナスとなる外部要因。

強みと弱みは内部要因、機会と脅威は外部要因として区別します。

例えば、競合企業の技術力が高いという事実は、それだけで自社の弱みになるわけではありません。

その技術に対抗するための能力が自社に不足しているのであれば、自社の弱みとして整理できます。

一方、競合企業が同じ市場に新しいサービスを投入することは、外部要因として脅威になる可能性があります。

このように、これまでの分析結果を、自分たちのビジネスとの関係から考えて分類していきます。

図7-50 SWOT分析の位置づけ:分析の統合から戦略への接続プロセス

AIにSWOT分析を依頼してみよう

AIにこう聞いてください⑦

私たちは、新規ビジネスについて次の調査・分析を行いました。 4C分析 外部環境分析(PEST分析) 競争分析(ファイブ・フォース分析) 問題点分析・原因と影響分析 リスク分析 トレンド分析 これまでの分析結果を添付します。 【各分析の結果を入力・資料を添付】 これらの分析結果を基に、私たちのビジネスについてSWOT分析を行ってください。 Strengths:強み Weaknesses:弱み Opportunities:機会 Threats:脅威 それぞれの項目について、どの分析結果から導き出したものなのかを示してください。 自社の内部要因と外部要因を明確に区別してください。 また、十分な根拠がない項目は、仮説または追加調査事項として示してください。 最後に、SWOT分析の結果から、私たちのビジネスモデルを強化するために考えられる戦略の方向性を複数提案してください。 提案した戦略について、どの強みや機会を活かし、どの弱みや脅威に対応するものなのかを説明してください。 ただし、最終的な戦略の選択と優先順位については、私たちのチームで判断します。

AIの分析結果をどう考えるか

AIが作成したSWOT分析を、チーム全員で確認しましょう。

それぞれの項目について、どのような調査結果が根拠になっているのでしょうか。

自分たちの強みだと考えていたことが、実際には競合企業も持っている強みかもしれません。

また、自分たちの弱みだと考えていたことが、協力者との連携によって補える場合もあります。

社会や技術の変化によって、思いがけない事業機会が生まれているかもしれません。

こうしたことを考えながら、SWOT分析の内容をチームで吟味してください。

そして、次の問いについて考えてみましょう。

「自分たちの強みを活かし、弱みを補い、社会や市場の変化を機会として捉え、脅威に対応するためには、どのようなビジネスモデルをつくればよいのだろうか」

ここまでの分析結果を基に、自分たちのビジネスをさらに魅力的なものへ発展させていきましょう。

図7-55 提案モデル「地域で素敵を体験(地域の匠)」のSWOT分析と戦略方針

この図は、「地域の匠」の調査・分析結果をSWOT分析として統合し、戦略方針へとつなげた事例です。

皆さんも、同じように自分たちのSWOT分析を作成し、どのような戦略が考えられるのかを整理してみてください。

今回の成果物

自分たちのビジネスについて、SWOT分析図を作成してください。

各項目の根拠となった調査・分析結果を整理し、SWOT分析から導き出した主な戦略の方向性も記述します。

これらを最終的な共同論文に収録します。

ここまで、さまざまな市場調査・分析を行ってきました。

しかし、分析結果を図表にまとめただけでは、新規ビジネス企画が完成したわけではありません。

今回の分析を通じて、最初に考えたビジネスアイデアについて、新しい発見があったのではないでしょうか。

例えば、自分たちと似たサービスが、すでに海外で実現されていることが分かったかもしれません。

しかし、そのサービスには、日本の顧客の要望に十分対応できていない部分があるかもしれません。

また、競合企業の優れた仕組みを参考にすることで、自分たちのビジネスを強化できる可能性もあります。

あるいは、最初に想定していた顧客とは異なる顧客層に、新しいビジネスの可能性があることに気づくかもしれません。

その場合には、Stage 1やStage 2に戻って、アイデアを考え直してみましょう。

最初に作成したリッチ・ピクチャーやビジネスイメージ図を、必要に応じて修正してください。

そして、修正したアイデアについて、もう一度市場調査・分析を行っても構いません。

Stage 1〜4を何度も繰り返しながら、ビジネスモデルを進化させていくことが、新規ビジネス企画の重要なプロセスです。

最初に考えたアイデアに固執する必要はありません。

新しい情報や気づきを基に、自分たちのビジネスをさらに魅力的で、実現可能なものへ発展させていきましょう。

次のStage 4では、ここまでの調査・分析結果を基に、ビジネスモデルキャンバスを作成します。

そして、人・モノ/サービス・金・情報の流れをビジネス構造図として描き、考えたビジネスが実際に動く仕組みになっているかを確認していきます。

今回のStage 3では、4C分析からSWOT分析まで、さまざまな調査・分析を行ってきました。

各分析で作成した図表は、チームの共同論文に収録します。

分析項目共同論文に収録する成果物
4C分析4C分析図、主要な競合商品・サービスの比較表
外部環境分析PEST分析図、対象業界・市場の外部環境分析図
競争分析ファイブ・フォース分析図
問題点分析主な問題点の整理、原因と影響の分析図
リスク分析リスク一覧表、リスク評価マトリクス、主要な対応策
トレンド分析時間軸に沿ったトレンド分析図
SWOT分析SWOT分析図、主要な戦略の方向性

各分析について、単にAIが作成した図表を掲載するだけではなく、分析結果から何が分かったのか、それが自分たちのビジネスにどのような意味を持つのかを、自分たちの言葉で記述してください。

また、調査で使用した統計資料、企業の公表資料、業界資料などについては、出典を明記してください。

AIを活用した場合にも、重要な事実や数値については、元の資料を確認することが必要です。

今回のStage 3で最も大切なのは、分析の方法を覚えることだけではなく、分析結果を理解し、自分たちのビジネスモデルをどのように強化すればよいのかを考えることです。

AIを優秀なリサーチャー、アシスタントとして活用しながら、チームで対話を重ね、より魅力的な新規ビジネスへと発展させていきましょう。

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