WIDEBOOK


第1部 情報技術の変遷を理解する

― DP・IS・IT(SIS)・IoT・DX・生成AIへ ―

著作・制作 株式会社ワイドブック
代表取締役 廣本 寿夫(Hisao Hiromoto)

監修・企画協力 岡山県立大学
学長 五福 明夫(Akio Gofuku)

目次

1-1 情報技術の変化を読み解く

1-2 ICT・IT・IoT・DX・生成AIの時代的変遷

1-3 ICT・IT・DXと職種の変遷

      

第1部では、DP、IS、IT(SIS)、IoT、DX、そして生成AIへと続く情報技術の変遷を整理しながら、技術の進化が社会、仕事、そして人に求められる役割をどのように変えてきたのかを学びます。

コンピュータの登場以来、私たちの仕事は、「紙と手作業」から「事務処理システム」へと変化してきました。さらに、インターネットやクラウドの普及によって、人や組織、企業や社会全体がつながる仕組みへと大きく広がっています。

この歴史は、単なる技術の進歩ではありません。

「業務をどう支えるか」
「人と組織をどうつなぐか」
「新しい価値をどう生み出すか」

という、仕事や社会のあり方を変えてきた歴史でもあります。

本講座では、DXを単なるデジタルツールの導入や業務の効率化として捉えるのではありません。

現在の業務を整理し、データやデジタル技術を活用しながら、業務プロセスや仕事の進め方を見直し、新しい価値を生み出していく取り組みとして捉えます。

特に2022年以降、生成AIが急速に普及したことで、情報の収集・整理・分析・文章化といった知的作業の進め方は、大きく変わり始めました。生成AIは、人間の思考や表現を支援する強力な技術になりつつあります。

そのため、本講座では、生成AIの使い方だけでなく、業務を整理するモデリング、考えを組み立てるロジック、そして人とAIが対話しながら業務を改善していく方法までを、一つの流れとして学びます。

しかし、技術が進化しても、目的を考え、仕事の進め方を見直し、AIをどのように活用するかを判断するのは人間です。技術をただ導入するだけでは、よりよい仕事や社会の実現にはつながりません。

細かな用語や年代を暗記する必要はありません。

まずは、情報技術がどのように社会と仕事を変えてきたのか、その大きな流れを理解することが大切です。

そのうえで、これからの時代に自分自身がどのような役割を担うのかを考えていきましょう。

    

第1部を読み進めるにあたって、細かな用語や年代をすべて暗記する必要はありません。
大切なのは、情報技術がどのように発展し、仕事や社会のあり方をどのように変えてきたのかを、大きな流れとして捉えることです。

情報技術は、紙と手作業による事務処理を効率化するところから始まり、業務を支えるシステムへ、人や組織をつなぐネットワークへ、さらに企業や社会のあり方そのものを変えるDXへと発展してきました。現在は、生成AIが人間の思考、表現、企画、判断を支援する時代に入っています。

この流れを理解すると、なぜこれからの時代に、次の二つの力が重要になるのかが見えてきます。

  • モデリング力
    現状を正しく捉え、仕事や組織、情報の流れを見える化する力
  • ロジック力
    見える化した仕組みを整理し、実行できる手順や判断の流れに整える力

第1部は、後に学ぶAIとの対話、論理的な思考、そしてDXを実現するための土台です。
技術の名前を覚えることが目的ではありません。技術の変化を通して、仕事の本質を考え、自分がどのような役割を担うのかを考える出発点にしましょう。

   

DP → IS → IT(SIS) → IoT → DX → 生成AI
― 技術の変化が、仕事と社会をどう変えてきたか ―

私たちの社会やビジネスは、情報技術の発展とともに大きく変化してきました。

かつての仕事は、紙の帳票や台帳を使い、多くの計算、集計、確認を手作業で進めるものでした。そこにコンピュータが登場し、計算や集計、定型的な事務処理を代行するようになりました。

これが、DP(Data Processing)の時代です。

やがてコンピュータは企業の業務に組み込まれ、販売管理、在庫管理、会計処理、人事管理などを支える情報システムへと発展しました。現在行っている業務を情報システムに置き換え、効率化やコスト削減を進める考え方が、IS(Information System)です。

さらに情報技術は、単に業務を効率化するだけでなく、事業やサービスを差別化し、新しい価値や収益を生み出すためにも活用されるようになりました。本教材では、この段階をIT(アイ・ティ)、すなわちSIS(Strategic Information System)の考え方として捉えます。

その後、ネットワーク、インターネット、クラウド、モバイルの普及によって、さまざまな情報をつなぎ、共有し、活用する基盤が整いました。

さらにIoTによって、カメラ、センサー、設備、車、家電など、現実世界の状態や動きもデータとして収集・活用できるようになりました。

こうして集まる多様なデータは、企業の経営判断だけでなく、地域、自治体、産業、地球環境までを視野に入れたDXを支える基盤になっています。

そして現在は、生成AIが情報の整理、文章作成、分析、企画など、人間の知的作業を支援する時代に入っています。

本節では、DP、IS、IT(SIS)、IoT、DX、生成AIという言葉を、単なる技術名としてではなく、仕事や社会の変化を読み解くための視点として整理していきます。

      

ICTとは、Information and Communication Technologyの略で、日本語では「情報通信技術」と訳されます。

コンピュータ、通信、ネットワーク、クラウド、モバイル端末、センサーなど、情報を収集し、処理し、伝達し、共有するための技術群を指します。

本書では、ICTを、単独で仕事や社会を変える考え方としてではなく、情報システムやDXを実現するために活用する個別の技術基盤として位置づけます。

たとえば、販売管理や会計処理などの業務を情報システムに置き換えるIS、事業やサービスを差別化するIT(SIS)、そして地域や社会全体の持続可能な変革を目指すDXは、いずれもICTを組み合わせて実現されます。

◆ ICTの基本的な役割

ICTには、主に次の役割があります。

  1. 情報を収集し、処理すること
  2. 人、組織、モノをつなぐこと
  3. 必要な情報を、必要な相手に伝え、共有すること

電子メール、社内ネットワーク、オンライン会議、クラウドサービス、スマートフォン、カメラ、センサーなどは、ICTの代表例です。

特にIoTは、カメラやセンサー、設備、車、家電などをネットワークにつなぎ、現実世界の状態や動きをデータとして収集するICTの発展形です。こうした多様なデータが集まるようになったことが、DXにおける判断や、AIの活用を支える基盤にもなっています。

本書では、ICTを、ISからIT、そしてDXへと進むシステムの進化を支える技術基盤として整理します。

図1-1-1 ICTの基本的な役割と活用分野

   

本書では、IT(アイ・ティ)を、ICTを活用して経営や事業、サービスのあり方を変え、他社との差別化や新しい価値・収益を生み出すための取り組みとして整理します。

ICTは、コンピュータ、ネットワーク、クラウド、モバイル、センサーなどの技術基盤です。

これに対してITは、それらの技術をどのように組み合わせ、どのような事業価値や顧客価値を生み出すかという、経営・事業の考え方です。

1980年代以降のアメリカでは、情報技術を単なる事務処理の道具ではなく、競争優位や新しい事業機会を生み出す戦略的な資源として捉える考え方が広がりました。

1990年代には、インターネットの普及に加え、国防総省を含む連邦政府でもITという呼び方が情報基盤の管理・活用に関する実務用語として定着し、企業の経営、行政、社会のあり方を変える重要なキーワードとなっていきました。

◆ IS:業務の情報化によるCost Saving

IS(Information System)は、現在行っている業務を情報システムに置き換え、正確に、速く、効率よく処理することを目的とします。

たとえば、販売管理、在庫管理、会計処理、人事管理などをシステム化し、人手を減らし、ミスを防ぎ、処理時間を短縮します。

これは、主としてコストを削減するための取り組みです。すなわち、Cost Savingを目的とした情報システムの活用です。

◆ IT:事業・サービスの差別化によるMake Money

これに対してITは、既存業務を効率化するだけではありません。

顧客に新しいサービスを提供する。
他社にはない便利さや体験をつくる。
データを活用して、新しい商品、事業、収益の仕組みを生み出す。

このように、事業やサービスを差別化し、利益を生み出すこと、すなわちMake Moneyを目指します。

ITの本質は、技術を導入することではありません。ICTを活用して、顧客や社会にどのような新しい価値を提供するかを考え、実現することにあります。

◆ Nolanの情報システム発展論

― Cost SavingからMake Moneyへ ―

Richard L. Nolanは、組織におけるコンピュータ利用や情報システムの活用が、導入、統合、データ管理、成熟へと段階的に発展していくことを示しました。

Nolanの考え方から学べる重要な点は、情報システムを個別業務の処理装置として導入するだけでは十分ではない、ということです。組織全体で情報を統合し、データを活用し、経営の目的に結び付けていく必要があります。

情報システムは、最初は業務を効率化し、コストを削減するために導入されます。しかし、情報を統合し、経営や事業に活かせるようになると、新しいサービスや収益の仕組みを生み出す力へと発展します。

つまり、DP・ISからITへの進化とは、情報システムの目的が、単なるCost Savingから、事業価値を生み出すMake Moneyへと広がっていく過程なのです。

図1-1-2 ITによる価値創出の考え方

    

IoT(Internet of Things)とは、さまざまなモノがインターネットやネットワークにつながり、情報を収集、共有、活用できる仕組みのことです。日本語では「モノのインターネット」と呼ばれます。

従来、インターネットに接続する中心は、パソコンやスマートフォンなど、人が直接操作する機器でした。

IoTでは、センサー、カメラ、家電、機械、車、工場設備、農業機器、医療機器など、さまざまなモノがネットワークにつながります。

IoTという言葉は、1999年にKevin Ashtonが、RFID(Radio Frequency Identification:電波による個体識別)を活用したサプライチェーンの説明で用いたことで広く知られるようになりました。

RFIDとは、電波を使ってICタグに記録された情報を読み取る技術です。

当初のIoTは、RFIDやセンサーを使って、モノの位置や状態を人手を介さずに把握する考え方と結び付いていました。

その後、通信技術、センサーネットワーク、クラウド、モバイル、コンピュータの性能が発展したことで、IoTは幅広い分野で活用されるようになりました。

◆ つながる「モノ」の広がり

IoTでは、モノに取り付けられたセンサーやカメラなどを通じて、現実世界で起きていることをデータとして取得します。

たとえば、次のような情報を自動的に集めることができます。

  • 温度、湿度、明るさ
  • 振動、音、機械の稼働状況
  • 人や車、荷物の位置と動き
  • 在庫量や商品の状態
  • 電力、水、燃料などの使用量

このように、これまで人が見に行き、確認し、記録していた現場の情報を、継続的にデータとして把握できるようになりました。

◆ IoTの特徴と役割

IoTの基本的な流れは、次のとおりです。

モノや現場の状態を測る
↓
ネットワークを通じてデータを集める
↓
データを分析し、状況を把握する
↓
判断や行動、必要に応じた制御につなげる

IoTの特徴は、現実世界の状態や変化を、データとして継続的に捉えられることです。

データを分析することで、故障の予兆、需要の変化、在庫不足、設備の異常、エネルギーの無駄などを早期に把握し、判断や行動につなげることができます。

◆ IoTの具体的な活用例

  • 工場では、機械の振動や温度のデータから、故障の予兆を把握できます。
  • 農業では、温度、湿度、日照などのデータをもとに、作物の管理に活用できます。
  • 物流では、荷物や車両の位置情報を把握し、配送状況の確認や経路の見直しに活用できます。
  • 建物や家庭では、電力使用量や室内環境のデータをもとに、省エネルギーや安全管理に活用できます。

◆ IoTがDXとAIを支える

IoTは、モノをつなぐこと自体が目的ではありません。現実世界で起きていることをデータとして捉え、企業や自治体、地域社会が、よりよい判断や行動を行うための基盤です。

WebやSNSには、人々の発信や活動に関する情報が蓄積されます。

これに対してIoTは、現場、設備、環境、モノの状態に関するデータを集めます。両者は同じものではありませんが、多様なデータが集まり活用できるようになったことが、DXを実現する重要な土台になっています。

また、IoTで得られるデータは、故障予測、需要予測、画像認識、最適化など、さまざまなAIの活用にもつながります。

IoTは、現実世界とデジタルの世界を結び、DXやAIによる新しい価値創出を支える重要な技術です。

図1-1-3 IoTの基本的な仕組みと活用例

    

DX(Digital Transformation)とは、デジタル技術を活用して、生活、仕事、組織、社会のあり方そのものを変革していく考え方です。

この概念は、2004年にスウェーデンのウメオ大学のErik StoltermanとAnna Croon Forsが、デジタル技術が人間の生活のさまざまな側面に及ぼす変化として示したことで知られています。

Digital Transformationは、頭文字だけならDTです。しかし、日本ではTransformationの「Trans」を「X」と表す慣用的な略記から、DXと表記されるようになりました。

DXとは、単に新しいシステムやデジタル技術を導入することではありません。デジタル技術を活用して、生活、仕事、組織、地域、社会のあり方を、よりよい方向へ変えていくことです。

図1-1-4  DX(Digital Transformation)とは

     

DXは、次のような段階を経て進んでいきます。

紙の書類や手作業で行っていた記録、申請、連絡、やり取りなどを、デジタルデータとして扱えるようにします。

たとえば、紙の帳票を電子化する、手書きの申請をオンライン化する、会議資料を共有できるようにするといった取り組みです。

デジタル化された情報をもとに、企業や組織の内部にある業務や仕組みをつなぎ、統合し、よりよく機能する形へ変えていきます。

この段階では、現状の業務をそのままデジタル化するだけでは十分ではありません。

現状を見える化し、あるべき姿を考え、業務の流れ、役割分担、組織の仕組みを見直すことが重要になります。

DXの考え方を、企業の中だけにとどめず、企業間、行政、地域、産業、社会全体の仕組みへと広げていきます。

組織を越えて情報やデータを共有・活用し、新しいサービスや価値を生み出します。たとえば、地域の交通、防災、医療、観光、エネルギー、環境問題などを、複数の組織が連携して解決していくこともDXです。

図1-1-5 DXの考え方と業務変革の流れ

     

DXが目指すのは、企業が便利になることや、業務が効率化されることだけではありません。

デジタル技術を活用して、私たちの生活やビジネスを、より安心・安全・快適なものにし、地域や社会、地球環境を含めて、持続可能な未来を実現していくことです。

そのために重要になるのが、部分最適ではなく、全体最適の視点からあるべき姿を考えることです。

企業だけが利益を得るのではなく、利用者にとっても価値があり、地域・社会・地球環境にとっても望ましい形を目指す。この「三方よし」の考え方が、DXを進めるうえで大切になります。

このように、DXにおけるX(Transformation:変革)の本質は、個別の業務や一つの組織だけを変えることではありません。多くの人や組織、地域、社会がよりよくつながり、持続可能な未来を共に創ることにあります。

図1-1-6 価値の連鎖とサステナブルな未来の創造

     

生成AI(Generative AI)とは、文章、画像、音声、動画、プログラムなどを生成するAIのことです。

従来のAIは、データを分類する、予測する、異常を検知するといった用途を中心に発展してきました。これに対して生成AIは、人間の指示に応じて、新しい文章や画像、アイデア、プログラム例などを作り出すことができます。

◆ 生成AIが広がった背景

生成AIの背景には、ニューラルネットワーク(Neural Network)とディープラーニング(Deep Learning)の発展があります。

ニューラルネットワークは、人間の脳の神経回路の仕組みを参考にしたAIのモデルです。コンピュータの性能が向上し、インターネットを通じて文章、画像、音声などの大量のデータが利用できるようになったことで、AIは多くのデータから特徴や関係を学習できるようになりました。

2010年代には、画像認識をはじめとする分野でディープラーニングが大きな成果を示しました。さらに2017年には、Transformerという新しい仕組みが提案され、大規模言語モデル(Large Language Model:LLM)の発展につながりました。

そして2022年、ChatGPTの公開をきっかけに、対話を通じて文章作成、情報整理、企画、学習支援などを行う生成AIが、研究者や技術者だけでなく、一般の人々にも広く使われるようになりました。

Transformerの仕組みや、生成AIがもっともらしい誤りを出す理由については、第2部で詳しく学びます。

◆ 従来のAIと生成AIの違い

従来のAI

データを分類する。
需要や売上を予測する。
不良品や不正な取引などの異常を検知する。

このように、与えられたデータをもとに、判断や予測を行う活用が中心でした。

生成AI

人間の指示に応じて、文章を作成する。
情報を整理し、要約する。
アイデアや企画のたたき台を作る。
プログラム例や説明文、図解の案を作る。

このように、人間の思考や表現を支援することができます。

◆ 人間の知的作業を支援する道具へ

生成AIは、知識を検索するだけの道具ではありません。

自分の考えを言葉にする。
情報を整理する。
複数の案を比べる。
企画や文章のたたき台を作る。
問い直しながら考えを深める。

このような知的作業を支援するパートナーとして活用できます。

ただし、生成AIは人間に代わって最終判断をするものではありません。

AIが出した内容に誤りや偏りがないか、自分の目的や状況に合っているかを確認し、最終的に判断する責任は利用する側にあります。

生成AI時代に重要になるのは、AIに丸投げする力ではありません。目的を示し、対話を通じて考え、内容を確認し、自分の判断で活用する力です。

第3部では、生成AIと効果的に対話し、自分の考えを深めるための方法を学びます。

図1-1-7 生成AIの発展と活用の考え方

    

DP、IS、IT、ICT、IoT、DX、生成AIは、それぞれ別々の言葉です。しかし、ばらばらに存在しているわけではありません。

情報技術は、計算や定型作業を代行するところから始まり、業務を情報システムに置き換え、事業やサービスを差別化し、現実世界のデータを活用し、社会全体を持続可能な方向へ変えていくものへと発展してきました。

  • DPは、計算機が計算、集計、定型的な事務処理を代行する段階です。
  • ISは、現在行っている業務を情報システムに置き換え、効率化やCost Savingを進める段階です。
  • ICTは、コンピュータ、通信、ネットワーク、クラウド、モバイル、センサーなど、情報を収集、処理、伝達、共有するための技術基盤です。
  • ITは、ICTを活用して、経営やサービスを差別化し、新しい価値や収益を生み出す取り組みです。
  • IoTは、現実のモノや現場の状態をデータとして取得し、把握、分析、判断、必要に応じた制御につなげる仕組みです。
  • DXは、それらのデジタル技術を活用して、業務、組織、サービス、地域、社会のあり方を変革する取り組みです。
  • 生成AIは、人間の思考、表現、設計、学習を支援する新しい知的な道具です。

このように見ると、情報技術の変化は、単なる技術の進歩ではありません。

人と情報の関係。
人と組織の関係。
企業と利用者の関係。
地域や社会のつながり。
そして、人とAIの関係。

これらが変わってきた歴史でもあります。

これからの時代に求められるのは、新しい技術名を覚えることだけではありません。

技術が何を可能にし、仕事や社会をどのように変えるのかを読み解く力です。

そのためには、現実の出来事を構造として捉える力が必要になります。

  • 業務の流れを整理する力
  • 情報やデータの関係を見抜く力
  • 判断に必要な条件を明確にする力
  • 実行可能な仕組みや手順に落とし込む力

これらの力が、本書で学ぶモデリング力(Modeling)とロジック力(Logical Thinking)につながっていきます。

モデリング力とは、現状や全体の仕組み、情報どうしの関係を見える形にする力です。

ロジック力とは、見える化した仕組みを、実行可能な流れや判断の筋道に整理する力です。

情報技術の歴史を学ぶ目的は、過去の用語や年代を暗記することではありません。変化の本質を捉え、これからの仕事や社会をよりよくデザインするために、モデリング力とロジック力を身につけることにあります。

図1-1-8 情報技術の変化を読み解く視点

     

本節では、DP、IS、IT、ICT、IoT、DX、生成AIへと続く情報技術の変化を確認しました。

情報技術は、計算や事務処理を代行する道具から、業務を支える情報システムへ、事業やサービスを差別化する力へ、そして地域や社会、地球環境までを視野に入れて変革する基盤へと発展してきました。

DXの時代に問われるのは、デジタル技術を導入することではありません。デジタル技術を使って、何を実現するのかということです。

私たちの生活、ビジネス、地域、社会を、より安心・安全・快適なものにし、持続可能な未来を実現していくことが求められます。

そのためには、現状の業務を改善し、効率化するだけでは不十分です。現状を正しく捉えたうえで、あるべき姿を描き、新しいビジネスやサービス、よりよい社会の仕組みを創造していく力が必要になります。

  • モデリング力
    人、モノ、情報、業務、判断の関係を整理し、現状や全体の仕組みを見える化する力です。
  • ロジック力
    見える化した仕組みをもとに、判断の筋道と実行可能な流れに整える力です。

まず、現実を正しく捉え、全体の構造を描く。
次に、その仕組みを、実行できる手順や判断の流れに整理する。

この順番が、DXを実現するうえで重要です。

DX時代、そして生成AI時代には、この二つの力がますます重要になります。AIを活用する場合にも、何を実現したいのかを考え、現状や前提を整理し、AIの出力を確認して判断する力が求められます。

次節では、DP、IS、IT、IoT、DX、生成AIが、時代の中でどのように発展してきたのかを整理します。

図1-1-9 DX時代に求められるモデリング力とロジック力

      

― 「処理」から「創造」へ、情報技術の役割はどう変わったか ―

重要なのは、情報技術が、計算を行う道具から、業務を支える仕組みへ、さらに人や組織をつなぐ基盤へと広がってきた流れをつかむことです。

DP、IS、IT、IoT、DX、生成AIは、前のものを置き換えて順番に現れたわけではありません。前の仕組みや技術を基盤にしながら、役割を重ね、広げてきた考え方です。

また、ICTは、コンピュータ、通信、ネットワーク、クラウド、モバイル、センサーなど、こうした変化全体を支える技術基盤です。

そして現在は、情報やデータを起点として、業務の流れ、状態の変化、判断の条件を明確にし、業務そのものを見直し、変革していくことが重要です。

このとき求められるのは、個別の業務だけを最適化する視点ではありません。企業、行政、地域、生活者を含めた社会全体のあるべき姿を考え、安心・安全・快適で、持続可能な未来をデザインしていく視点です。

さらに生成AIの登場により、情報技術は、人間の思考、表現、設計を支援し、よりよい判断を行うための材料を提供する段階に入りつつあります。

この流れを理解すると、DX時代・生成AI時代に、なぜモデリング力とロジック力が必要になるのかが見えてきます。

     

― 複雑な計算を高速処理する「巨大な計算機」 ―

コンピュータが最初に本格的に活用されたのは、科学技術計算の分野でした。

◆ コンピュータの始まり(1940年代)

代表的なものが、アメリカで開発されたENIAC(エニアック)です。

ENIACは、1943年から1946年にかけて開発され、1946年に公開された、真空管を用いた巨大な電子計算機でした。部屋全体を占めるほどの大きさがあり、当時としては驚くほど高速に計算を行うことができました。

◆ 弾道計算のために開発されたENIAC

ENIACは、米陸軍が必要としていた弾道計算用の射表を高速に作成するために開発されました。

射表とは、砲弾を目標へ到達させるために必要な、砲の角度などを示した計算表です。

この計算表を作成するには、目標までの距離、砲の向きや角度、弾薬の条件、気象など、砲弾の飛行に関わる多くの条件を考慮する必要があります。

このような複雑な数値計算を人が手作業で行うと、膨大な時間がかかります。そこで、大量の計算を高速に処理する計算機が求められたのです。

◆ 活用の広がりと当時の位置づけ

ENIACは弾道計算のために開発されましたが、完成後には、気象予測や物理・工学計算など、他の科学技術計算にも用いられるようになりました。

さらに、コンピュータの用途は、宇宙開発をはじめ、さまざまな科学技術の分野へと広がっていきました。

しかし、当時のコンピュータは、一部の専門家だけが扱う特別な機械でした。企業の業務を支えたり、人や組織をつないだりするものではありません。この時代のコンピュータは、あくまで「大量で複雑な計算を、高速かつ正確に処理する巨大な計算機」という位置づけでした。

図1-2-1 科学技術計算の時代におけるコンピュータ活用

     

― コンピュータによる事務処理が、企業や行政へ広がる ―

科学技術計算に使われていたコンピュータは、やがて企業や行政の事務業務にも使われるようになりました。

当時、給与計算、請求書の発行、売上の集計などは、多くの人手と時間を必要とする仕事でした。

台帳に記録された数値をもとに、電卓を使って一件ずつ計算・集計し、その結果を帳票へ記入していたためです。処理する量が増えるほど、作業時間がかかり、計算ミスも起こりやすくなります。

そこで、こうした事務データをコンピュータで処理する活用が始まりました。
このようなコンピュータによるデータ処理を、DP(Data Processing:データ処理)といいます。

◆ 計算機センターというビジネスの登場

当時の大型コンピュータは非常に高価であり、すべての企業や行政機関が自ら保有できたわけではありません。

大企業や官公庁の中には、自社・自組織でコンピュータを導入するところもありました。
一方で、多くの企業や行政機関のために、大型コンピュータを保有し、計算処理を専門に行う計算機センターが登場しました。

企業や行政機関は、給与計算や請求処理に必要な伝票やデータを計算機センターへ渡します。
計算機センターは、それをコンピュータで処理し、給与明細、請求書、売上集計表などの結果を依頼先へ返します。

このように、コンピュータを自ら保有せず、外部の計算機センターへ処理を依頼する利用形態を、計算機代行サービスといいます。

◆ データを入力する仕事

紙の伝票に書かれた内容をコンピュータで処理するには、まずデータとして入力する必要があります。

そのため、伝票の内容をパンチカードなどへ入力する仕事も生まれました。こうした入力作業を担当する人は、パンチャーと呼ばれました。

計算機センターが入力から計算処理、結果の返却までを一括して行う場合もあれば、データ入力を専門に請け負う会社が関わる場合もありました。

◆ まとめて処理するバッチ処理

当時は、データが発生するたびにすぐ処理するのではなく、一定期間分をまとめて処理する方法が一般的でした。

たとえば、月末に一か月分の勤務データをまとめて給与計算し、請求データをまとめて請求書にする、といった方法です。

このような処理方式を、バッチ処理といいます。

◆ 当時の位置づけ

この時代のコンピュータは、企業や行政の定型的な事務作業を、速く正確に処理するための道具でした。

そして、計算機センターというビジネスが生まれたことで、コンピュータは一部の専門家だけのものではなく、企業や行政の仕事を支える存在へと広がり始めました。

図1-2-2 事務計算・計算代行サービスの時代

      

― コンピュータが、企業の中の仕事を支え始める ―

計算機センターへ処理を依頼する利用形態に加えて、企業や行政機関の中にも、コンピュータが導入されるようになりました。

はじめは、大企業や官公庁を中心とした動きでした。コンピュータは高価であり、導入できる組織は限られていましたが、給与計算、会計、販売、在庫管理など、日常的に発生する多くの事務処理を支えるために活用され始めました。

◆ 社内にコンピュータ室を設ける

1960年代後半以降、大企業や官公庁では、大型汎用機(メインフレーム)を社内へ導入する例が増えていきました。

企業は、コンピュータを設置するためのコンピュータ室を設け、各部門から集めたデータを、そこでまとめて処理します。

たとえば、営業部門の売上データ、経理部門の会計データ、人事部門の勤務・給与データなどを集め、企業全体の業務を支えるしくみがつくられていきました。

◆ メーカーの支援を受けて運用する

ただし、大型コンピュータを導入すれば、すぐに使えるわけではありません。

企業の業務に合わせて、どのような計算を行い、どのような帳票を出すのかを決め、それをコンピュータに処理させるためのプログラムを作る必要がありました。

また、コンピュータを安定して動かすためには、専門的な保守や運用も必要です。

そのため、多くの企業では、社内にコンピュータの担当者や管理者を置きながらも、プログラムの作成・変更、コンピュータの保守、運用支援などを、富士通やIBMなどのメーカー、またはその関連会社へ委託していました。

企業側の担当者は、各部門の要望を聞き、必要な処理内容を整理し、メーカー側と調整する役割を担っていました。

◆ 部門ごとの業務へ広がる

1970年代以降には、オフィスコンピュータ、通称オフコンも普及していきました。オフコンは、会計処理、伝票発行、元帳処理、販売管理など、部門や事業所の事務業務を支えるための小型コンピュータです。

これにより、本社の大型コンピュータだけでなく、部門や拠点でも、必要な業務をコンピュータで処理できるようになりました。

◆ 部門ごとの効率化が生んだ課題

コンピュータの導入によって、各部門の事務処理は大きく効率化しました。

一方で、部門ごとに必要なシステムを個別に構築した結果、同じ顧客や商品に関するデータが、営業、経理、物流などで別々に管理されることもありました。

このように、部門ごとの業務を効率化するだけでなく、企業全体の情報をどのようにつなぎ、活用するかが、次の課題になっていきます。

図1-2-3 企業内情報処理の導入

       

― 「後でまとめる」から「その場で応答する」仕組みへ ―

これまでのコンピュータは、一定期間分のデータを集め、まとめて処理するバッチ処理を中心に使われていました。

通信回線で拠点と中央のコンピュータを結ぶ取り組みは、最初からリアルタイム処理を目的としていたわけではありませんでした。

はじめは、離れた支社や営業所から中央のコンピュータへ処理を依頼し、結果を受け取るために使われました。処理そのものは、一定期間分をまとめて行うバッチ処理が中心でした。

また、複数の利用者が端末を通じて一台の大型コンピュータを共同で利用する、TSS(Time Sharing System:タイムシェアリングシステム)も利用されるようになりました。

こうした通信回線と端末の活用を基盤として、利用者の操作に応じてその場で処理結果を返す、オンライン・リアルタイムシステムが発展していきました。

◆ 「後でまとめる」処理から、「その場で応答する」処理へ

バッチ処理では、たとえば一日分や一か月分のデータを集めてから、まとめて処理していました。

これに対してオンライン・リアルタイムシステムでは、窓口、店舗、予約端末などで操作が行われると、その情報が通信回線を通じて中央のコンピュータへ送られました。

中央のコンピュータは、その場で必要な処理を行い、結果を端末へ返しました。

これにより、利用者は待ち時間を減らし、その場で確認や手続きを進められるようになりました。

◆ 専用線で端末と中央のコンピュータを結ぶ

当時は、現在のように、誰もがインターネットへ自由に接続できる時代ではありませんでした。

中央にある大型コンピュータと、全国の支店、窓口、店舗などの端末は、専用線で結ばれました。

こうして、離れた場所で発生した操作やデータを中央で処理し、その結果を各地の端末へ返す仕組みがつくられていきました。

◆ 代表的な活用例

  • 銀行・ATM
    窓口やATMで入出金が行われると、預金残高を確認・更新し、取引結果をその場で返す仕組みでした。
  • 座席予約システム
    鉄道や航空機の予約窓口から、空席状況を確認し、予約を確定する仕組みでした。全国の窓口から、同じ情報を確認できるようになりました。
  • 流通・小売
    店舗での販売情報を速やかに在庫管理や発注へ反映し、品切れや過剰在庫を減らすために活用されました。
  •  

◆ 当時の位置づけ

オンライン・リアルタイムシステムによって、コンピュータは、社内で後から事務処理を行うだけの道具ではなくなりました。

窓口、店舗、予約など、顧客や利用者と直接関わる業務を支える基盤へと、役割を広げていきました。

これは、情報技術が企業の内部だけでなく、サービスの現場と直接つながり始めた重要な転換点でした。

図1-2-4 オンライン・リアルタイムシステムの普及

     

― 個人の効率化がもたらした「ブラックボックス化」という課題 ―

1980年代から1990年代にかけて、ワープロやパソコンがオフィスへ普及し、仕事の進め方は大きく変わりました。

それまで、文書の作成や集計作業の多くは、手書き、清書、専門部署への依頼によって進められていました。
しかし、社員が自分の机にある機器を使い、文書を作成し、数字を集計し、資料を作成できるようになりました。

このように、オフィス業務をコンピュータで効率化する考え方を、OA(Office Automation:オフィスオートメーション)といいます。

◆ 個人が自分の仕事を効率化する

ワープロによって、文書の作成・修正・印刷がしやすくなりました。

また、Excelなどの表計算ソフトによって、売上や費用などの数字を自分で集計し、表やグラフにまとめられるようになりました。

これにより、従来は情報システム部門や専門担当者に依頼していた作業の一部を、現場の担当者自身が進められるようになりました。

◆ EUCの広がり

さらに、現場の担当者が、Excelなどの表計算ソフトのマクロ機能や、Accessなどのデータベースソフトを使い、自分の業務に合った小規模な業務システムを作る動きも広がりました。

このように、情報システム部門だけでなく、利用者自身がコンピュータを活用して業務を支えることを、EUC(End User Computing:エンドユーザーコンピューティング)といいます。

現場に近い人が自ら工夫できるようになったことで、業務改善を速く進められるようになりました。

◆ 個人の工夫が生んだ課題

一方で、個人の工夫だけで作られた業務システムには、課題もありました。

作った本人だけが、目的や計算方法、データの扱い方を理解しており、設計書や操作手順が残されていないことがあったためです。

作った本人が異動・退職すると、ほかの人が中身を理解できず、修正や改善ができなくなる場合がありました。

このように、特定の人だけに仕事や知識が依存する状態を、属人化といいます。
また、仕組みや処理の内容がほかの人には分からなくなる状態を、ブラックボックス化といいます。

図1-2-5 個人の知識・ノウハウを共有するナレッジマネジメント

      

こうした課題への対応として、個人の頭の中にあるノウハウや経験を、組織全体で活用できる形に整理し、共有するナレッジマネジメントの考え方が重要になりました。

たとえば、経験や勘の中にある知識を、業務手順、判断基準、マニュアル、データなどの形に整理します。
そして、ほかの人も利用できるようにすることで、知識を組織の資産として活用していきます。

現在注目されているノーコード/ローコードツールも、現場の担当者が比較的簡単に仕組みを作れるという大きな利点があります。

一方で、目的、設計の考え方、データの扱い、処理の流れを明確にしないまま作れば、当時のEUCと同じように、誰も修正できないブラックボックスを生み出すおそれがあります。

現場の工夫を活かしながら、全体の仕組みを見える化するモデリング力と、処理や判断の流れを整理するロジック力が、ここでも重要になります。

図1-2-6 オフィスオートメーションの本格化

    

― 部門の壁を取り払い、業務を「一つの流れ」として捉える ―

1990年代から2000年代にかけて、企業では、部門ごとに分かれていた情報や業務をつなぎ、企業全体の仕事の進め方を見直す動きが強まりました。

それまでのコンピュータ化は、販売、購買、生産、会計など、それぞれの部門の仕事を効率化することを中心に進められていました。

しかし、企業の仕事は、実際には一つの部門だけで完結するものではありません。受注した情報は、購買、生産、在庫、出荷、会計など、多くの部門へ引き継がれていきます。

部門ごとのシステムが増えるほど、企業全体の仕事の流れと、情報システムの仕組みとの間に、ずれが生じるようになりました。

◆ 部門ごとに分かれていた情報

たとえば、営業部門が受けた注文の情報を、生産部門、物流部門、経理部門でも利用する必要があります。

ところが、部門ごとに別々のシステムを使っていると、同じ情報を何度も入力したり、紙やファイルで引き継いだりする必要がありました。

また、受注、生産、在庫、出荷などの最新状況を、企業全体で同じように把握することも簡単ではありませんでした。

個別の業務を効率化するだけでは、企業全体の仕事を円滑に進められないことが明らかになっていきました。

◆ ERPによる情報と業務の統合

こうした課題への対応として注目されたのが、ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)です。

ERPは、販売、購買、生産、在庫、会計、人事など、企業の主要な業務を、一つの仕組みの中でつなぐ考え方です。

たとえば、営業部門が受注した情報をもとに、生産や在庫の状況を確認し、出荷を行い、その結果を会計処理へつなげていきます。

必要な部門が共通のデータを利用できるようにすることで、重複した入力や確認の手間を減らし、企業全体の状況を把握しやすくしていきました。

◆ BPRによる業務の見直し

しかし、システムを統合するだけでは、企業全体の仕事がよくなるとは限りません。

そこで、既存の業務の流れを根本から見直し、よりよい流れへ再設計する、BPR(Business Process Reengineering:業務プロセス改革)の考え方も注目されました。

大切なのは、今までの仕事をそのままシステムに置き換えることではありません。

受注から会計までの業務を一つの流れとして見える化し、どこに重複、待ち時間、手戻りがあるのかを確認したうえで、仕事の進め方そのものを見直すことが重要でした。

◆ 求められた全体最適の視点

この時代に求められたのは、部門ごとの部分最適ではなく、企業全体としてよりよい仕事の流れをつくる、全体最適の視点でした。

業務の効率を高めるだけでなく、必要な情報を適切なタイミングで共有し、顧客へよりよい商品やサービスを届けることが目指されました。

この全体最適の視点は、後のDXを考えるうえでの重要な基礎となりました。

図1-2-7 部門間統合と業務改革の時代

      

― 「開かれたネットワーク」で、顧客・社会と直接つながる時代へ ―

前節まで、情報システムは主に、企業の内部にある業務や部門をつなぐために発展してきました。

1990年代後半から2000年代初頭にかけて、インターネットが普及すると、企業は社内の仕組みを越えて、顧客、取引先、社会と直接つながるようになりました。

ここで重要なのは、インターネットが単に新しい通信手段になっただけではないことです。顧客との出会い方、商品やサービスの届け方、企業どうしの連携の仕方まで、大きく変えていきました。

◆ Webの登場で、誰もが情報を利用できるようになる

1989年に、ティム・バーナーズ=リーによってWWW(World Wide Web)の考え方が提案されました。WWWとは、インターネット上にある文書や画像を、リンクで結び、Webブラウザで見られるようにする仕組みです。

1993年には、文字と画像を同じ画面に表示できるMosaic(モザイク)というWebブラウザが登場しました。Mosaicは、Webを使いやすくし、多くの人がインターネット上の情報を利用するきっかけになりました。

こうしたWebブラウザの普及によって、専門的な知識がなくても、多くの人がWebを使えるようになっていきました。

◆ ECが、顧客との接点を変える

Webの普及によって、企業はホームページを通じて、商品やサービスの情報を広く発信できるようになりました。

やがて、インターネット上で商品を探し、比較し、注文し、購入するEC(Electronic Commerce:電子商取引)が広がりました。代表的な例として、アメリカではAmazonが1995年にオンライン書店として始まりました。日本では、楽天市場が1997年に開設され、インターネット上の商店街として多くの店舗と顧客を結びました。

顧客は、店舗や営業担当者から情報を受け取るだけでなく、自ら商品やサービスを調べ、比較し、購入するようになりました。

企業にとっても、インターネットは、店舗や営業担当者による接点に加わる、新しい顧客接点になりました。

◆ eビジネスへ広がる

ECが主にインターネット上での商品・サービスの売買を指すのに対し、eビジネスは、インターネットを活用して事業全体の仕組みを変えていく、より広い考え方です。

たとえば、顧客がWebで注文すると、その情報は、在庫確認、出荷、決済、問い合わせ対応など、企業内部の多くの業務につながります。

また、企業は取引先とも、受発注、在庫確認、納期確認などの情報をやり取りする必要があります。

このように、顧客との接点から、企業内部の業務、取引先との連携までを、インターネットを通じてつなぐ動きが、eビジネスとして広がっていきました。

企業間の電子的な受発注は、以前から専用線などでも行われていました。インターネットの普及によって、より多くの企業が接続し、情報を活用しやすくなったのです。

◆ ITが事業やサービスの価値を変える

この時代、情報技術は、社内業務を効率化するだけのものではなくなりました。

顧客との新しい接点をつくり、商品やサービスの提供方法を変え、他社との差別化や新しい収益につなげる力を持つようになりました。

本書では、このように、ICTを活用して事業やサービスの価値を高める考え方を、IT(アイ・ティ)として捉えます。

図1-2-8 インターネット活用・eビジネスの拡大

      

― データに基づく判断と改善のサイクルへ ―

2000年代後半から2010年代にかけて、ITを利用する基盤と役割は大きく変わりました。企業は、コンピュータやサーバーを自ら保有して使うだけでなく、インターネットを通じて必要なサービスを利用するようになりました。

また、スマートフォンと高速モバイル通信が普及すると、顧客や社員は、場所にかかわらずWebや業務システムを利用できるようになりました。その利用を通じて、閲覧、購買、位置情報、利用状況など、多くのデータが生まれるようになりました。

こうして蓄積されたデータは、単に記録・保存するものではなく、顧客や現場の状況を理解し、判断や改善に活用するものへと変わっていきました。

◆ 自社保有から「サービス利用」へ

それまで企業は、サーバーやシステムを自社内に設置し、運用することが一般的でした。このような形を、オンプレミスといいます。2000年代後半以降は、オンプレミスに加えて、インターネットを通じてクラウドサービスを利用する形が広がりました。

クラウドを利用すると、企業は大きな設備を最初から自社で保有しなくても、必要な機能や処理能力を必要な時に利用できます。

その結果、電子メール、文書共有、顧客管理、会計、人事など、さまざまな業務システムがクラウドサービスとして提供されるようになりました。

◆ モバイルによって、いつでも・どこでもつながる

スマートフォンと高速モバイル通信が普及すると、顧客も社員も、場所にかかわらず、必要な情報やサービスへアクセスできるようになりました。

顧客は、移動中や外出先でも、商品を検索し、比較し、購入できるようになりました。

社員も、外出先や現場から、業務報告を行ったり、必要な情報を確認したりできるようになりました。

このように、仕事やサービスは、会社や店舗の中だけで行うものではなくなっていきました。

◆ データを、判断と改善に活かす

クラウドやモバイルの普及によって、業務システムのデータだけでなく、Web上の閲覧・購買の記録、位置情報、利用状況など、多様で大量のデータが蓄積されるようになりました。

このような膨大で多様なデータを、ビッグデータと呼びます。

ビッグデータは、単に保存するためのものではありません。顧客が何に関心を持っているのか、どのような商品が選ばれているのか、業務のどこに問題があるのかを分析し、経営判断や業務改善に活用することが重要になりました。

◆ データを集める対象が、現実の世界へ広がる

クラウド、モバイル、ビッグデータの普及によって、企業は、Webや業務システムで生まれるデータを、より多く集め、蓄積し、分析できるようになりました。

次に、データを集める対象は、人がWebやシステムを利用した記録だけでなく、現実の世界へと広がっていきます。工場の機械、店舗、車、建物、農地などに取り付けられたセンサーから、温度、位置、振動、稼働状況などのデータを取得するIoTが広がりました。これにより、企業は、顧客の行動だけでなく、現場で何が起きているのかを、データとして把握できるようになりました。

そして、こうして集めたデータをもとに、業務の流れ、組織の仕組み、商品やサービスの提供方法そのものを見直していく取り組みが、DXへとつながっていきます。

このように、情報技術は、業務を処理する道具から、現実をデータとして捉え、よりよい判断と変革につなげる基盤へと役割を広げていきました。

図1-2-9 クラウド・モバイル・ビッグデータ活用の時代

      

― 現実世界の「モノ」をつなぎ、現場をデータとして捉える ―

2010年代に入ると、さまざまなモノをネットワークにつなぐIoT(Internet of Things)の活用が本格化しました。

・「人の目」から「センサーやカメラによる自動取得」へ

これまで、人が直接現場へ行き、目で確認し、点検・記録しなければ把握できなかった情報を、センサーやカメラを通じて自動的に取得できるようになりました。

温度、湿度、振動、位置、稼働状況などの数値データに加え、カメラによる画像や映像も、現場を把握するための重要なデータとなっています。

たとえば、工場では設備や製品の状態、店舗では人の動きや混雑状況、道路では車両や交通状況などを画像・映像として捉えることができます。

用途に応じて、これらのデータはリアルタイムまたは定期的に収集され、現場の状況を継続的に把握できるようになりました。

・多様な現場での活用例

工場:設備の振動や温度を監視し、異常や故障の予兆を早期に把握します。

農業:温度、湿度、土壌などのデータを活用し、作物の生育環境を適切に管理します。

物流:車両や荷物の位置情報を把握し、配送状況の確認や配送計画の改善に活かします。

・IoTの本質

IoTの本質は、単にモノをインターネットにつなぐことではありません。

現実の世界で起きていることをデータとして捉え、見える化し、分析を通じて、次の判断や行動、制御や改善につなげることにあります。

この技術により、情報システムは、単なる「社内業務データの処理」から、「現場そのものをデータとして捉える」段階へと進化しました。

さらに、IoTによって集められた現場データは、AIによる予測や判断支援、DXによる業務やサービスの変革を進めるための重要な基盤となっています。

図1-2-10 IoTによる現場データ活用の広がり

      

― デジタル技術で、仕事・生活・社会の仕組みを変革する ―

2000年代以降、インターネット、クラウド、モバイル、IoT、AIなどのデジタル技術が急速に広がりました。こうした技術を活用して、業務やサービス、社会の仕組みそのものを変えていこうとするDX(Digital Transformation)の動きが本格化していきます。

ITの時代には、ICTを活用して業務を効率化し、経営やサービスの価値を高める取り組みが進みました。

販売管理、在庫管理、会計処理、人事管理など、企業内の業務を正確に、効率よく処理することが重要な目的でした。

しかし、DXの時代になると、デジタル技術は単なる業務処理や効率化のための道具にとどまりません。業務の進め方だけでなく、人の働き方、暮らし方、サービスの受け方、さらには社会の仕組みそのものを変えていきます。

◆ 働き方を変えるDX

たとえば、短時間・単発の仕事を仲介するマッチングサービスでは、働く人は、自分の空いている時間に合わせて仕事を選ぶことができます。

企業側も、必要な時間帯に必要な人数を募集し、人手不足への対応につなげることができます。

これは、単に求人情報をインターネットに掲載しただけではありません。働く人の時間、企業の業務、人員配置、報酬の支払い、評価、本人確認などをデジタル上でつなぐことで、働き方そのものを変えた例です。

人は、決められた職場や時間だけで働くのではなく、自分の生活に合わせて働くという新しい選択肢を持つようになりました。

◆ 生産の仕組みを変えるDX

スマート工場やスマート農業では、IoTによって現場の状態をデータとして取得し、AIやクラウドを活用して、稼働状況、品質、環境、エネルギー使用量などを把握します。

ここで重要なのは、単に作業を自動化することではありません。

工場では、設備や製品のデータを活用することで、不良品を減らし、設備故障の予兆を把握し、安全で安定した生産につなげることができます。

農業では、温度、湿度、日照、土壌、水分などのデータを活用し、作物に合った環境を整えることで、品質の向上や安定した栽培につなげることができます。

さらに、こうしたデータは、収穫量の安定化、省エネルギー、資源の有効活用、栽培方法の改善にも活かされます。

DXは、生産性を高めるだけでなく、よりよい品質、より安全な現場、より持続可能な生産の仕組みをつくっていきます。

◆ 医療・教育の仕組みを変えるDX

医療の分野でも、DXは単なる予約システムや電子カルテの導入にとどまりません。

事前予約、受付、診察、検査、会計、薬の受け取りまでの一連の流れを見直すことで、患者の待ち時間を減らし、医療機関の業務負担を軽減することができます。

たとえば、診察後の会計を自動決済にすることで、患者は会計窓口に並ばずに帰宅できるようになります。

これは、単に支払い方法が便利になっただけではありません。病院での過ごし方、患者の負担、医療スタッフの業務の流れそのものを変える取り組みです。

教育の分野でも、オンライン学習や学習管理システムの活用により、教室で同じ時間に同じ内容を学ぶだけでなく、自分の理解度や生活時間に合わせて学べるようになりました。

さらに、学習履歴をもとに苦手な部分を確認し、一人ひとりに必要な教材や課題につなげることもできます。

◆ DXが目指すもの

DXの時代には、デジタル技術を使って、現在の業務を便利にするだけでなく、仕事、生活、サービス、社会の仕組みそのものを見直していきます。

その先にあるのは、単なる効率化ではありません。

利用者にとってわかりやすく、現場にとって働きやすく、組織にとって運用しやすく、社会にとって持続可能な仕組みをつくることです。

DXとは、デジタル技術を使うことそのものではなく、デジタル技術を活用して、新しい働き方、新しいサービス、新しい価値を生み出し、仕事・生活・社会の仕組みをよりよい形へ変革していくことです。

DXの時代とは、安心・安全・快適で、持続可能な未来へ向けて、社会の仕組みそのものをデザインし直していく時代なのです。

図1-2-11 DXの本質と変革の流れ

     

― 「ゼロから作る」から「AIと共創し、人間が判断する」時代へ ―

2022年11月のChatGPT公開以降、生成AIは専門家や技術者だけのものではなく、多くの人が日常的に使える強力なアシスタントとして、急速に広がりました。

  • 知的作業のパラダイムシフト

これまで人間が時間をかけてゼロから行っていた調査、文章作成、企画、プログラミングなどの知的作業の進め方が、大きく変わりました。

たとえば、箇条書きのメモから報告書のたたき台を作ったり、目的や条件を伝えて企画書の構成案を作ったり、プログラムの案を作成したりすることができます。

これにより、人間がすべてを「ゼロから作る」のではなく、AIにたたき台や選択肢を作ってもらい、それを人間が確認し、考え、修正し、仕上げるという新しい知的作業の進め方が広がっています。

  • AIの限界と人間の責任

生成AIは、もっともらしい文章や提案を作ることができますが、情報が古かったり、事実と異なる内容を示したりすることもあります。

そのため、AIに仕事を丸投げするのではなく、出力された内容を人間が確認し、必要に応じて修正し、最終的に人間が判断することが不可欠です。

重要なテーマでは、一つのAIの回答だけで結論を決めず、複数のAIに尋ねて、異なる視点や理由を比較することも有効です。

複数のAIを使う目的は、多数決で答えを決めることではありません。さまざまな視点や考え方を得て、それらを人間が比較・検証し、よりよい判断につなげることにあります。

  • これからの時代に求められる力

これからは、知識をただ暗記するだけでは十分ではありません。

AIに対して、「何をしたいのか」という目的、「どのような状況なのか」という前提、「どのような条件があるのか」という制約を適切に伝え、AIとの対話を通じて考えを深め、その結果を確認し、活用する力が求められます。

そのためには、現状を構造的に捉え、全体の仕組みを見える化するモデリング力(Modeling)と、目的や手順、判断の条件を明確に組み立てるロジック力(Logical Thinking)が、これまで以上に重要になります。

生成AIの時代とは、AIに人間の仕事をすべて任せる時代ではありません。

AIの力を活かしながら、人間が目的を考え、問いを立て、比較・検証し、最後は自ら判断する。

「人間がゼロからすべてを作る」時代から、「AIと人間が共創し、人間が判断する」時代へと、知的作業のあり方そのものが変わり始めているのです。

図1-2-12 生成AI時代における知的作業の変化

      

― 技術の歴史から「本質」を読み解き、未来の仕組みを描く ―

本節では、ICT、IT、IoT、DX、生成AIなど、情報技術に関わる考え方が、時代の流れの中でどのように発展してきたかを確認しました。

◆ 情報技術の役割の進化

情報技術は、単なる「計算や事務処理を効率化する道具」として始まりました。

その後、人や組織をつなぎ、現場をデータとして捉え、業務やサービスのあり方そのものを変革する基盤へと発展してきました。

◆ 生成AI時代の到来

現在は、生成AIによって、人間の思考、表現、設計を支援し、判断のための材料を提供できる時代に入っています。

人間とAIが対話し、共に考えながら仕事を進める機会が増えたことで、人間に求められる力も大きく変わりました。

◆ 歴史から学ぶ、本当に大切なこと

大切なのは、技術名や登場した年代を暗記することではありません。

「技術が、仕事の進め方、組織の動き方、人の役割をどのように変えてきたのか」を読み解くことです。

◆ これからの時代に求められる力

技術の変遷の本質を理解することは、現状を構造的に捉え、全体の仕組みを見える化するモデリング力(Modeling)につながります。

さらに、あるべき姿を描き、業務や仕組みを整理し、判断の筋道と実行可能な流れに落とし込むロジック力(Logical Thinking)へとつながります。

これからの時代には、技術を知るだけではなく、技術を使って「どのような仕組みをつくるのか」を考える力が、ますます重要になります。

次節では、情報技術の発展とともに、職種や働き方がどのように変化してきたのかを確認していきます。

図1-2-13 情報技術の発展と役割の変化

      

― 「処理する人」から「考え、創造する人」へ ―

DX(デジタルトランスフォーメーション)の時代、市場の変化と顧客ニーズの多様化が進む中、企業とそこで働く人には、新しい役割と仕事の進め方が求められています。

これからは、勘や経験だけに頼るのではなく、データを収集・整理・分析し、そこから課題や変化の兆しを読み取り、判断や行動につなげることが重要になります。

たとえば、次のような活用が考えられます。

・顧客の行動や利用データから、まだ見えていないニーズや新しい市場を探る。
・問い合わせやクレームのデータから、商品・サービスの改善点を見つける。
・営業、製造、企画、開発など、部門間の情報をつなぎ、新しい商品やサービスの方向性を検討する。
・経営判断に必要な情報を整理し、複数の選択肢を比較しながら、次の打ち手を考える。

これまでのIT活用は、ICTを使って業務を効率化し、コストを削減することから始まりました。

その後、情報技術は、顧客価値を高め、新しいサービスや収益を生み出すための基盤へと役割を広げてきました。

それに伴って、人の役割も「決められた業務を正確に処理する」ことから、「データを読み取り、課題を発見し、新しい仕組みや価値を考える」ことへと広がっています。

DXの時代に求められるのは、単なる効率化にとどまりません。

人、業務、情報、サービスの関係を見直し、人が自ら考え、部門を越えて連携し、新しい価値を生み出していくことが重要なのです。

     

― 道具の進化を見つめ、仕事のしくみを再構築する ―

人間の仕事は、ある日突然変わったわけではありません。より楽に、より正確に、より安全に、そしてより大きな価値を生み出すために、人は常に新しい道具を取り入れ、試行錯誤を重ねながら仕事を進化させてきました。

・農業

くわや牛馬から、トラクター、センサー、ドローン、AIへと道具が進化し、人が行う作業や判断のあり方も変わってきました。

・工業

手作業から、蒸気機関、工作機械、制御装置、ロボットへと発展し、人は機械を動かすだけでなく、監視し、制御し、改善する役割も担うようになりました。

・事務

手書きの帳簿やそろばんから、パソコン、業務システム、クラウドサービスへと変化し、情報を処理するだけでなく、データを活用する仕事へと広がってきました。

・営業

足で稼ぐ訪問中心の営業から、顧客データの分析、オンライン商談、生成AIを活用した提案設計などへと、仕事の進め方や役割が広がっています。

大切なのは、新しい技術を使うこと自体ではありません。

「何が楽に、正確に、安全になるのか」
「人は何をしなくてよくなるのか」
「その結果、どのような新しい価値を生み出せるのか」

を考えることです。

そのためには、まず仕事の全体像を捉える必要があります。

誰が、何を、どの順番で行い、どこで情報を受け渡し、どこで判断しているのか。こうした仕事の仕組みを見える形にするのが、モデリング力(Modeling)です。

そして、見える化した仕事の流れから無駄や重複、改善できる部分を見つけ、よりよい手順や判断の仕組みへ組み立て直していくために、ロジック力(Logical Thinking)が必要になります。

システムやAIがどれほど発展しても、中心にあるのは、人間が何を実現し、どのような価値を生み出したいのかという目的です。

「新しい道具で、今の仕事をどう楽にするか」だけではなく、「新しい道具があるなら、仕事そのものをどう変えられるか」まで考える。

それが、これからの時代に求められる仕事の捉え方なのです。

図1-3-1 仕事は、道具とともに変化してきた

     

― 効率化を超え、新しい付加価値を生み出す道具へ ―

道具や機械の発展は、人間の負担を減らすだけでなく、私たちの仕事や役割そのものを変化させてきました。

蒸気機関や工作機械、産業用ロボットなどの機械は、重労働や同じ動きの繰り返し、品質のばらつきが生じやすい作業を支援してきました。

その結果、人間の仕事は、「手で作る作業そのもの」から、「機械の操作」「工程の管理」「品質の確認」「異常への対応」へと広がっていきました。

やきものの歴史は、こうした技術進化の意味を考えるうえで、分かりやすい例です。

  • ろくろの登場

ろくろは、作業を楽にするだけでなく、手だけでは難しかった均整のとれた薄い器など、新しい形や表現に挑戦する可能性を広げました。

  • ガス窯・電気窯の導入

薪を使う登り窯では、炎の流れや温度などによって焼き上がりが変化します。ガス窯や電気窯では、温度をより安定して管理できるようになり、品質をそろえやすくなりました。

このように、技術の進化は、単に生産性を高めるだけではありません。

人間の負担を減らし、品質を安定させると同時に、作り手が新しい価値や表現を生み出す可能性を広げてきたのです。

図1-3-2 陶芸・やきものに見る技術進化と新しい価値の創造

ICT、DX、生成AIにも、これと共通する考え方があります。

これらは、単なる業務効率化のための道具ではありません。これまで見えにくかった情報を見える形にし、人や組織をつなぎ、新しい仕事の進め方や仕組み、サービスを創るための道具でもあります。

したがって、新しい技術を見るときには、

「何が置き換わるのか」だけではなく、
「何が見えるようになるのか」
「人間は何に力を使えるようになるのか」
「何を新しく生み出せるのか」

という視点が重要です。

図1-3-3 技術は人を支え、新しい価値を生み出す

生成AIも同じです。

生成AIは、文章、画像、企画、分析、プログラミングなど、さまざまな知的作業を支援する有能な道具です。しかし、何を実現したいのかという目的を決め、必要な情報を選び、AIの出力を確認し、最終的に採用するかどうかを判断するのは人間です。

AIに仕事を丸投げするのではなく、人間が目的を持ち、AIと対話しながら考え、新しい価値を共に創り出していく。

それが、これからの時代に求められる人と技術の関係なのです。

図1-3-4 人とAIが共創する新しい価値

     

― 記録・計算の作業から、組織の判断を支える仕事へ ―

機械が力仕事や反復作業を支援してきたように、コンピュータやAIは、計算、記録、集計、帳票作成といった事務処理のあり方を大きく変えてきました。

  • 手作業による事務処理

かつては、手書きの帳簿、そろばん、電卓などを使い、人間が一つひとつ情報を記録し、計算していました。

正確に記録し、間違いなく計算することが、人間の重要な役割でした。

  • コンピュータと業務システムによる効率化

ワープロや表計算ソフト、業務システムの普及により、文書作成、計算、集計などが効率化・自動化されました。

さらに、ネットワークやクラウドの広がりによって、情報は個人や一つの部門だけで保有するものから、組織全体で共有し、活用する資産へと変化していきました。

  • RPAによる定型業務の自動化

パソコン上での定型操作をソフトウェアロボットに代行させるRPA(Robotic Process Automation)が普及しました。

画面を開く、データをコピーする、決められた場所に入力する、ファイルを作成する、メールを送信するなど、手順やルールが決まった繰り返し作業を自動化することができます。

これによって、人間は単純な繰り返し作業から離れ、確認や判断、改善などに時間を使えるようになります。

  • 生成AIによる知的作業の支援

生成AIの登場によって、自動化の対象はさらに広がりました。

文章の下書き、情報の整理・要約、問い合わせ内容の分類、報告書のたたき台作成、複数の案の提示など、これまで人間が行ってきた知的な事務作業の一部も支援できるようになりました。

ただし、生成AIの出力が常に正しいとは限りません。

そのため、人間には、AIやシステムの出力を確認し、必要な情報を選び、業務の流れに抜けや重複がないかを見極め、最終的に判断する役割が求められます。

これからの事務職は、単に書類を作り、データを入力する仕事ではありません。

「記録・計算・入力する仕事」から、「情報を整理し、確認し、業務を改善し、組織の判断を支える仕事」へ。

コンピュータやAIの発展とともに、事務職に求められる役割も変化していくのです。

図1-3-5 コンピュータとAIは、事務処理を変えていく

補足:RPA(Robotic Process Automation)とは

RPAは、人がパソコンで行う定型的な事務作業を、ソフトウェアロボットによって自動化する仕組みです。

厳密にはAIそのものではありません。基本的には、あらかじめ決められた手順やルールに従って処理を実行します。

一方、AIは、データや文章などをもとに、分類、予測、生成などを行うことができます。

RPAとAIを組み合わせることで、情報の読み取りや分類、判断支援などを含む、より高度な業務自動化へと発展させることもできます。

RPAは、「人が繰り返していた定型作業をシステムに任せ、人間はより判断や改善に力を使う」という、これからの事務処理を考えるうえで重要な技術の一つです。

図1-3-6 RPAによる定型業務の自動化

      

― 作業の代替ではなく、人間の思考を支えるパートナーへ ―

コンピュータやRPAが、計算や入力、転記などの定型的な事務作業を効率化・自動化してきたのに対し、生成AIは、調査、情報整理、分析、企画、文章作成など、ホワイトカラーの知的作業を支援し始めています。

たとえば、市場動向、競合、技術トレンドなどについて、生成AIを活用することで、大量の情報を整理し、要点をまとめ、比較や検討のためのたたき台を短時間で作ることができます。

これまで人間が多くの時間を使っていた「情報を集め、整理し、最初の案を作る」という作業をAIが支援することで、人間は、その内容を検討し、考えを深めることに、より多くの時間を使えるようになります。

ただし、AIが示した情報には、誤りや古い情報が含まれる場合があります。

重要な情報については、公式情報や原典を確認し、事実を確かめたうえで活用することが必要です。

図1-3-7 生成AIによるホワイトカラーの知的作業支援

生成AIは、情報を整理するだけでなく、目的に応じて複数の観点を示し、人間が考えるための材料を提供することができます。

たとえば、次のような支援が考えられます。

・複数案のメリット、リスク、課題を整理する。
・異なる立場から論点を洗い出す。
・将来の変化について複数の仮説を検討する。
・企画書の構成案やプログラムのたたき台を作成する。
・見落としている視点や、別の選択肢を提示する。

一つの考えだけで結論を出すのではなく、AIとの対話を通じてさまざまな可能性を検討することで、人間の思考を広げることができます。

つまり生成AIは、人間に代わって意思決定する存在ではなく、人間がよりよく考え、判断するための支援者として活用することができます。

図1-3-8 生成AIによる意思決定支援

AIが出した内容を、そのまま使えばよいわけではありません。

AI自身が人間のように仕事上の目的や責任を持っているわけではなく、最終的な責任を負うこともできません。

「何のために調べるのか」
「どの情報を信頼するのか」
「どの選択肢を採用するのか」
「どのように行動するのか」

これらを決め、確認し、最終的に判断するのは人間です。

これからのホワイトカラーには、単に知識を持っているだけではなく、目的を設定し、必要な情報を整理し、AIに適切な問いを立て、出力された内容を比較・検証し、自分で判断して、新しい価値へつなげる力が求められます。

生成AIによって、人間が考えなくてよくなるのではありません。

むしろ、AIが情報整理やたたき台づくりを支援するからこそ、人間には、「何を目指すのか」「何を選ぶのか」「どう実行するのか」を考える力が、これまで以上に重要になります。

図1-3-9 AI支援による意思決定の流れ

AIが出した内容を、そのまま使えばよいわけではありません。AIは目的を持たず、最終責任を負うこともできません。

・何のために調べるのか。
・どの情報を信頼するのか。
・どの選択肢を採用し、どのように行動するのか。

・これらを決め、確認するのは常に人間です。

これからのホワイトカラーには、目的を設定し、AIに適切な問いを立て、出力結果を検証し、新しい価値へつなげる設計力が求められます。

図1-3-10 人間による最終判断とこれからの役割

       

― 技術の進化に合わせて、共創の仕組みをデザインし続ける ―

これからの仕事を考えるうえで大切なのは、人間と技術の役割を固定化しないことです。

システム、ロボット、AIの能力は、今後も進化し続けます。

そのため、人間を中心として、それぞれの特徴や得意なことを活かしながら、役割分担を柔軟に見直していく視点が求められます。

・システム

情報を正確に記録・共有し、高速に処理することが得意です。

・ロボット

物理的な作業、危険な作業、反復的な作業を、安全かつ精密に代行・支援することが得意です。

・AI

膨大な情報を収集・整理し、複数の案や視点を示すことで、人間の知的作業や判断を支援することが得意です。

中心にあるのは、常に人間です。

「何のために働くのか」
「誰にとって、どのような価値を生み出すのか」
「何をどの技術に任せ、どこで人間が確認・判断するのか」
「最終的に誰が責任を持つのか」

これらを考え、決めることは、人間の重要な役割です。

技術の進化を恐れるのではなく、「新しい技術によって、何が可能になるのか」を読み解くことが大切です。

そのためには、現在の仕事の流れ、情報の関係、現場の動き、利用者にとっての価値を構造的に捉えます。そのうえで、システム、ロボット、AIのどこに何を任せ、人間がどこで関わるのかを設計します。

そして、技術が進化すれば、その役割分担も見直します。

人間を中心に、技術と共創しながら、よりよい仕事やサービスの仕組みを柔軟に設計し続ける。

それが、これからの時代に求められる仕事のデザインなのです。

図1-3-11 人間を中心に、システム・ロボット・AIとの関係を設計する

      

― 全体を捉え、仕事の流れと判断の筋道を整える ―

技術を活かして仕事や職種の役割分担を考えるためには、まず、業務や現場の全体像を正しく捉える必要があります。

モデリング力(Modeling)とは、誰が、何を、どの順番で行い、どこで情報が生まれ、どこへ伝わり、どこで判断しているのかを整理し、仕事や仕組みの全体像を見える形にする力です。

そして、全体の構造を捉えたうえで、その中で「どのような順番で処理するのか」「どの条件で判断するのか」「何を繰り返すのか」「どの情報を受け取り、何を出力するのか」を整理します。

これが、ロジック力(Logical Thinking)です。

つまり、

モデリング力で「全体の仕組み」を捉え、
ロジック力で「処理と判断の筋道」を整える。

この二つが組み合わさることで、仕事の仕組みを具体的に設計できるようになります。

全体のモデルと、その中で動くロジックが明確になって初めて、次のような役割分担を考えることができます。

・どの処理をシステムに任せるか。
・どの作業をロボットに支援させるか。
・どの場面でAIを活用するか。
・どこで人間が確認し、判断し、責任を持つか。

さらに、役割分担を決めるだけではありません。

仕事の流れや判断の仕組みを整理することで、システムの設計、業務の自動化、AIの活用、そして実際のプログラムやサービスの実装へとつなげることができます。

モデリング力とロジック力は、プログラミングのためだけの力ではありません。

人間、システム、ロボット、AIの特徴を活かしながら、よりよい仕事の仕組みを考え、設計し、実行し、改善し続けるための基礎となる力なのです。

これらの力については、後の部でさらに詳しく学びます。

図1-3-12 ロジック力とモデリング力で仕事の流れを整理する

図1-3-13 業務やしくみを見える形にするモデリング力

図1-3-14 ロジック力とモデリング力が設計・実装につながる流れ

     

― 社会の要請を読み解き、自らの役割を更新し続ける ―

職種は、最初から固定されていたわけではありません。社会がその時代に何を必要とするかによって、新しい職種が生まれ、既存の職種の役割も変化してきました。

狩猟採集の時代から、農業の誕生による定住化、産業革命による工場と分業の発展、そして組織の巨大化に伴うホワイトカラーの台頭へと、社会のしくみが変わるたびに、人間の仕事や役割も多様化してきました。

そして現在、ICT、IoT、データ活用、AI、生成AIなどの発展によって、データを扱う役割、技術と現場をつなぐ役割、業務やサービスの仕組みを再設計する役割の重要性が高まっています。

図1-3-15 社会の必要が変わると、職種も変わる

新しい職種が生まれる一方で、従来の職種がすべてなくなるわけではありません。

多くの場合、職種名は同じでも、技術や社会の変化によって仕事の中身や求められる役割が変わっていきます。

・営業

単に商品を販売するだけでなく、顧客の課題やニーズを理解し、データやAIも活用しながら、解決策を考え、提案する仕事へと役割が広がっています。

・事務

書類の作成や処理を中心とする仕事から、システムやAIを活用して情報を整理し、組織の判断や業務改善を支援する仕事へと役割が広がっています。

・製造

人による手作業を中心とした仕事から、ロボット、IoT、データ、AIなどを活用しながら、品質、安全性、生産性を管理・改善する仕事へと役割が広がっています。

このように、技術が進化すると、「人間が何をするのか」「人間にどのような力が求められるのか」も変化します。

ここで重要になるのが、リスキリング(Reskilling)です。

リスキリングとは、単に新しい技術の操作方法を覚えることではありません。

社会や技術の変化を読み取り、自分の役割を見直し、新しい仕事の進め方に対応するために、必要な知識や技能を学び直すことです。

技術の進化によって仕事が変わるのであれば、人間もまた、学びながら自分の役割を更新していく必要があります。

「職種がどうなるか」を待つのではなく、「これから自分はどのような役割を担うのか」を考え、必要な力を身につけていく。

それが、変化の大きい時代に求められる働き方なのです。

図1-3-16 社会と技術の変化に対応する職種の変遷

        

これからのキャリアを考えるうえで大切なのは、「どの職種が残るか、なくなるか」という単純な予測にとらわれないことです。

新しい技術やAIの導入によって、既存の仕事の中身がどのように変化し、そこで人間に求められる役割がどう変わるのか、そして、どのような新しい役割が生まれるのかを読み解くことが重要です。

  • 既存の仕事の進化

営業は、顧客データや生成AIを活用し、顧客の課題をより深く理解し、付加価値の高い提案を設計する仕事へと役割が広がっていきます。

事務は、業務システム、RPA、AIを活用し、単なる書類処理から、情報を整理・確認し、組織の判断や業務改善につなげる仕事へと役割が広がっていきます。

製造は、IoT、ロボット、データ、AIなどを活用し、品質、安全性、生産性を管理するとともに、現場の改善を進める仕事へと役割が広がっていきます。

  • 新しい役割の誕生

仕事や社会のデジタル化が進むことで、それらの技術を活用し、仕事の仕組みを設計・改善するための新しい役割も生まれています。

たとえば、

・システムやサービスを設計する役割
・データを分析し、意味を読み解く役割
・現場の業務プロセスを見える化し、再設計する役割
・現場とシステム、AIなどの新しい技術をつなぐ役割
・人間とAIの役割分担を考え、新しい仕事の進め方を設計する役割

などです。

これからの職種の変化は、単に「仕事がなくなる」という現象だけで捉えることはできません。

既存の仕事が高度化する。
仕事の中で人間が担う役割が変わる。
そして、新しい技術を活かすための新しい役割が生まれる。

こうした変化が同時に進んでいきます。

だからこそ大切なのは、現在の職種名だけを見ることではありません。

仕事の中で何が変わるのか、何を技術に任せられるのか、人間には何が求められるのかを考えることです。

そのためにも、仕事や社会の変化を全体として捉えるモデリング力と、その中で仕事の流れや判断の筋道を組み立てるロジック力が重要になります。

変化を正しく読み解き、学びながら、自分自身の役割を更新していく。

それが、これからの時代のキャリアを考えるうえで重要になるのです。

図1-3-17 既存の仕事の進化と新しい仕事の誕生

     

― 技術進化と人間の役割の共創、モデリングとロジックへ ―

本節では、ICT、IT、IoT、DX、生成AIの発展とともに、職種や仕事の中身がどのように変化してきたのかを確認しました。

◆ 道具とともに変わり続ける仕事

仕事は、道具や技術とともに変化してきました。

農業、工業、事務、営業など、どの仕事においても、人間は新しい道具やしくみを取り入れながら、仕事をより楽に、より正確に、より安全に、そしてより価値あるものへと変えてきました。

機械は、人間の力仕事や反復作業を支援し、コンピュータは、計算、記録、集計、帳票作成などの事務処理を支援してきました。

さらにRPAやAIの活用によって、定型的な操作の自動化だけでなく、情報収集、整理、要約、複数案の比較など、ホワイトカラーの知的作業や、人間の意思決定を支える領域へと技術の活用範囲が広がっています。

◆ 職種の進化とリスキリング

大切なのは、「どの仕事が残るのか、なくなるのか」だけを考えることではありません。

営業、事務、製造など、既存の職種も、職種名は同じでも、技術や社会の変化によって仕事の中身や求められる役割が変化しています。

そして、社会のしくみが変われば、新しい職種や役割も生まれます。

これから重要になるのは、職種名だけを見ることではありません。

その仕事が社会の中でどのような役割を担い、誰にどのような価値を生み出しているのかを読み解くことです。

そして、社会や技術の変化に合わせて必要な知識や技能を学び直し、自分自身の役割を更新していくことが、リスキリングの重要な意味になります。

◆ 技術を活かすための設計力

人間、システム、ロボット、AIの特徴を活かし、それぞれの役割を柔軟に設計するためには、まず、仕事や社会の全体像を捉える必要があります。

誰が、何を、どの順番で行い、どこで情報が生まれ、どこへ伝わり、どこで判断しているのか。

こうした仕事やしくみの全体構造を整理し、見える形にする力が、モデリング力(Modeling)です。

そして、その中にある処理の順番、条件分岐、繰り返し、情報の入出力などを整理し、実行可能な筋道にする力が、ロジック力(Logical Thinking)です。

つまり、

モデリング力で「全体の仕組み」を捉え、
ロジック力で「処理と判断の筋道」を整える。

この二つの力を身につけることで、人間は技術を受け身で使うだけではなく、「何を人間が行い、何をシステム・ロボット・AIに任せるのか」を考え、よりよい仕事や社会のしくみを設計できるようになります。

技術が進化すれば、人間の役割も変化します。

だからこそ、技術の変化を読み解き、学び続けながら、人間と技術が共創する新しい仕事のしくみを設計していくことが、これからますます重要になります。

次節では、AI(Artificial Intelligence)の歴史と現在を整理し、生成AIが登場するまでに、人工知能がどのように発展してきたのかを確認します。

図1-3-18 ICT・IT・DXと職種の変遷

       

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